預金債権差し押さえの準備
預金債権の差し押さえについては、支店の特定がどの範囲で必要かという点について高裁レベルで争いがありました。特に支店名を一括に記載する方法により差し押さえができるかという点が大きな関心事でありました。
しかし、最判平成25年1月17日は、支店名を一括に記載したり順番を並べたりする方法では特定が十分ではなく,支店名での特定が必要としました。わかりやすくいえば、○○支店と具体的にいう必要がある、という原始的なものに戻った、これまでの弁護士たちの工夫は否定されたというところでしょうか。
ところで、一部の金融機関だけなのですが、近時確定判決を取得している場合に、判決と確定証明書の写しを添付して預金口座のある支店名を照会すると,回答をするようになったとみられる都市銀行も存在するようです。都市銀行は、名前と生年月日が分かれば、キーボードでたたけばすぐに所在支店が分かるシステムがあるので、都市銀行が司法の役割にどれだけ貢献するか、どの程度動きが出るのかということと思われます。前提となる債務名義は判決という紹介が多いですが、例えば離婚の場合のように、調停調書(和解)でも良いのか、はたまた執行認諾文言がある公正証書でも良いのか,ということのように思います。
しかし、私見では、銀行のシステムにおいては、簡単に所在支店が判明するのですから、強制執行を不奏功に終わらせるということでは銀行が、かつてのスイス銀行のようなものになりかねないと思います。また、現在では、住所地に近い支店か勤務地に近い支店にしか口座は開けないというケースも多いようですが、昔はそのような決まりはなく振り込め詐欺が流行して以降厳しくなったという印象です。したがって、それ以前の属人的な関連性が低い口座を持っている人は差し押さえを免れやすいというのは不公平であり、金融機関という公共性の高い機関として社会通念上の信認が得られるかという観点からの対応が求められるものと考えられます。