通常損耗につき賃借人が原状回復義務を負担する場合
最判平成17年12月16日裁判集民事218号1239ページは、通常損耗について賃借人に負担をさせる特約について厳格な判断をしています。
具体的には、契約締結時に、その旨の特約が明確に合意されている必要があること、明示又は説明すべき義務があること、特約の成立が認められるには契約書自体の明記か、口頭による説明があり賃借人が明確に認識してそれを合意の内容としたこと-が必要としています。
特に、賃借人の立場から通常損耗にかかる補修費としては当該特約によるもののみを負担するものであるかなどについても、賃借人が理解できていることが必要であるとしている。
平成17年判決は、特定優良賃貸住宅の賃貸借契約の事案であることからその射程距離がすべてに及ぶかは分かりませんが、通常損耗に係る修理費を賃借人が負担する特約が成立する場合の要件を明示したものであるが、同判示部分は、民間の賃貸住宅の賃貸借契約一般に通じるものと考えられています。
特に予測可能性を重視したという点を押さえておく必要があります。