濫用的会社分割にはどのような法的手段があり得ますか。
原則的には、会社分割というのは会社法に基づく組織法上の行為で、債権者保護手続もいりません。
したがって、理論的には、信義則違反、権利濫用といった主張が考えられるのですが、これにとどまらずいろいろな戦術が研究されています。
①会社分割無効の訴え、②詐害行為取消権の行使、③破産法上の否認権の行使、④会社法22条1項の類推適用、⑤法人格否認の法理です。
この点、②及び③は論点が共通するので、実際は②か、④が有力な構成ではないかと考えられます。
②及び③については、①という法制度があるから詐害行為取消はできないという主張もありましたが、判例はこれを否定してその行使を認める流れにあります。
詐害行為取消権の法律要件は、詐害行為の存在、債務者・受益者が詐害の事実を知っていることです。
福岡高判平成23年10月27日は、本件会社分割は、本件株式譲渡及び本件増資と一連一体のものというべきであるから、実質的には原告に対し、甲・乙2店舗の事業収益からの本件貸金の債権回収を著しく困難にさせる行為ということができる」として「本件会社分割は詐害行為を構成することになる」と判示しています。
この判決は、切り出された新設会社の責任を認めている点に意義があるといえます。