個人事業主の個人再生の注意点は?
まず、事業者の生活費及び今後の弁済原資を確保することができるだけの収益が見込めるかどうかが重要となります。
収益を確保するためには、従業員の協力・仕入れ先・得意先の協力が必要になる。
また、税金の支払いの目途を立てておくことが必要です。
さて、買掛金についてですが、支払停止があったにもかかわらず、開始決定前に買掛金の弁済をしてしまうと「偏頗弁済」とされてしまいます。清算価値の算定にあたり偏頗弁済の額を上乗せして計算されてしまいますので否認の制度がないからといって偏頗弁済をすることは妥当ではありません。
例外として、申立後開始決定までの間に、事業の継続に欠くことのできない原材料の購入等をなす場合、裁判所の許可を得て共益債権とすることができます。開始決定後に発生した買掛金は、共益債権に該当します(民事再生法119条2項)。随時弁済が可能となります。
次に悩ましいのが売掛金です。開始決定時までに発生した売掛金については、清算価値として考えるのが実務です。開始決定後の売掛金から、事業の経費、再生債務者の生活費、積立予納金が支払われて、ほとんど債務者の手元には残りません。ですから、実務上は、開始決定時までの売掛金を清算価値と考えられることが一般的といえます。
しかしながら、そのようなルールになっているわけではありませんので、清算価値が増加した場合は認可決定に近い時期の清算価値を確認することが必要になることもあります。したがって、常に資料を提出することができるよう準備をしておくことが必要になります。
リース物件や所有権留保特約付きのクレジットで購入した物件に関する債権は、一般に別除権付再生債権として取り扱われます。したがって、原則として、物件を引き揚げてもらい、別除権の不足額を再生債権として扱うことになります。
しかし、事業を継続するためには必要なリース物件もあります。そこで、別除権者との間で別除権協定を締結することによって、再生債務者が使用を継続する代わりにリース物件の利用権相当額を分割して支払う等の措置が必要になります。