物上保証で錯誤無効が肯定された事例
Xは、AがY銀行から1億円を借りることについて連帯保証をするとともに、不動産に根抵当権を設定しました。
しかし、Xは、BがCから2200万円を借り入れることについて連帯保証及び物上保証したものであり、要素の錯誤があると主張したものです。
本件は、詐欺によって、保証契約ないし根抵当権を設定してしまったものといえます。
しかし、第三者の詐欺を主張するためには、相手方の悪意が要件とされます。
そこで錯誤無効の主張をしたものと考えられます。一般的には、通常の判断能力を有するものが、金銭消費貸借約定書及び根抵当権設定契約書のような書類をそのような内容の書類と認識して、署名・押印した場合には錯誤が認められることは困難であると考えられています。
それにもかかわらず、東京高裁が錯誤の主張を認めたのは、Xが80歳であるという事実を重視したからではないかと考えられます。従って、高齢者が保証人ないし物上保証人になる場合については、より慎重な意思確認をすることが要請されると考えられています。
そして、本判決は、担保をとる金融機関の具体的な状況に応じて、担保差入意思の確認を求めたものとして積極的に評価をすることができる。
このように、高齢者と取引をするときの意思確認については注意すべき規範を示したものとして、東京高判平成6年3月24日金法1414号33頁を位置づけることができるように思われます。
なお、上記のような事情がなく、単に、連帯保証契約の約定書を読まないで署名・押印をした場合において、要素の錯誤を認めつつも重大な過失をした例があります。
逆にいうと、白地の連帯保証契約書を示されて内容が把握できなかった場合について等は、残された問題として残るように思われます。