裁判員裁判と量刑法
これまで裁判員裁判は、2件ほど担当したことがありますが,GW前に3件目のトライアルがありそうです。
トライアルが迫っているから、というわけではないですが、原田國男さんの『裁判員裁判と量刑法』が目に止まって精読させていただきました。
原田さんといえば、東京高裁の元裁判官。高裁の弁護人ほどやりがいのない仕事はないといわれる中で原田さんの決まり文句は「弁護人の控訴趣意は認められない。しかしながら,職権をもって判断すると,原判決の量刑は現時点においては重きに失しているから破棄を免れない」として,なんだかんだいいまして弁護人の主張を多少なりとも酌んでくれるという点でした。
そんな原田さんは量刑法に関する専門家です。量刑法というのは研究者が少なく,事実上裁判員裁判が始まるまでは研究すらまともに行われてこなかったのではないかというのが実態ではないかと思います。そういう意味では院生などには是非、原田さんの『量刑判断の実際』などは呼んで欲しいと思いますし,私も控訴趣意に引用したりしております。しかし、量刑理論というのは裁判官もピンと来ないようで,ドイツの量刑理論を引いても分かっているのか、いないのか、という場面に出くわします。
新しい裁判員裁判の量刑の傾向は、全体として重いというのが弁護人をしている弁護士の感想ではないかと思いますが、氏の交通事故に関する新結果主義なる分析には正鵠を射るものがあるように感じました。
量刑の傾向としては,裁判官裁判とほぼ同様の量刑傾向を示している、そうです。
この書籍に励まされたのは以下の記述でした。
「さすが,弁護士は,人権そのものにかかわってくると銭金ではなく,本気で全力を尽くしてくれる。司法への信頼はこのような誰も注目しないような事件において実現されているのである・・・我が国司法の伝統的な被告人の改善更生こそが大切だという考え方が現れている」(原田國男『裁判員裁判と量刑法』(2011年、成文堂)206頁)