犯罪被害者・損害賠償命令制度

事業をなされていても犯罪に巻き込まれるということはあるかと思います。

 

あまり知られていませんが,刑事裁判に併せて損害賠償命令というものがあり,刑事記録などを証拠として債務名義(判決と同じ効力があるもの)をとることができるという制度があります。はじめて,損害賠償命令制度の「弁論」というものに立ちました。

 

日本という国は強制執行には冷淡なのですが,犯罪被害者に対しては被害弁償がなされていない場合は,被害者に民事の債務名義を取得させるというくらいのことがあっても,良いと思います。

 

確定すれば時効も10年になるわけですし,その間,回収の見込みが出てくることもあるかもしれません。

 

交通事故訴訟などでの利用が念頭にあるようなのですが,あまり事件番号をみる限り利用されていないようでした。

しかし,刑事裁判の法廷で,検事が退席後に被害者が検事の席に座るというのは,理論的には民事訴訟の場に変わっているとはいえ,被害者が事件当事者であることを印象づけるものだ,と思いました。

 

この制度,特に,示談がなされなかった犯罪被害者向けにもっと積極的に活用されるべきではないか,と思いました。絵に描いた餅になるかもしれませんが債務名義の取得は国家が応援する事柄ではないかと思います。

 

誰も関心がないと思うのですが,損害賠償命令制度の証拠番号は「A号証」というのだそうです・・・。民事は,甲乙丙,刑事は,甲乙弁というのですが「えーごうしょうって何でしょうか」と思わず,コートクラークに聴いてしまいました。

 

これまで,民事訴訟法というのは,権威主義的な学者が何人かいてアンタッチャブルな感じがあったのですが,損害賠償命令制度は民事訴訟と刑事訴訟が交錯する理論的には興味深い分野といえます。そして,刑事訴訟の中に付帯して民事の制度が設けられたことにより,民事訴訟と刑事訴訟の解釈上の断絶というのも,解消に向かうのではないか,と導入されたときは思っていました。

もっとも,この制度は,犯罪被害者の方,検察官,弁護士会が積極活用に向けて動き出すべきだと思うし,犯罪に遭うか否かは偶然のことなので,偶然の不利益をカバーするのは国家の役割だと思います。

そういう意味では,損害賠償命令制度の国選化がなされるのが望ましい姿なのではないかと,考えられました。

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