取引終了後の和解契約の無効を認め消滅時効が弁護士相談時とした事例

東京地裁平成28年4月28日は、事案としては、それなりにインパクトのあるもので、国内公設先物取引業者に勧誘され差益損金1000万円を含めた合計2200万円の損害を被った原告が、取引終了時である平成15年11月に同社従業員から債権債務なしとする和解書にサインさせられ9年後に弁護士に相談したという事例でした。

 

実際の年収は240万円の年金収入でしたが、これを年収800万円未満に丸を付けるように指導し虚偽の記載をしていたことや習熟度も十分ではありませんでした。

 

そして和解契約の無効を認定しました。和解契約が無効になるのも珍しいですが、和解契約書作成の際に、原告が損害賠償請求をなし得ることを認識していなかったものと認められ、かかる認識について従業員らに対して黙示に表示されていたことから要素の錯誤があるとされたようです。

 

問題は時効の起算点ですが、請求原因は、明確ではないのですが不法行為構成とすると知ったときから3年となります。そこで、原告は、平成25年1月に弁護士に相談をして初めて従業員の違法行為によって損害を被ったことを認識したとして、消滅時効期間が満了していないとしましたが、認識についてもある程度客観的なものが求められると解されるところから、少なくとも和解契約作成後弁護士に相談する機会があったのではなかったのか、など結論には疑問を差し挟む余地があります。

 

消滅時効については、名古屋高判平成25年2月27日が、時効の起算点は先物取引終了時ではないとした裁判例は出されています。東京地裁でも弁護士相談時という裁判例が出されたことに重要な意味があります。これは複雑なシステムを利用した消費者契約などでは応用がきく可能性を示唆するものと考えられるものです。

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