高齢者と適合性原則違反
東京地裁平成28年6月17日は、昭和5年生まれのXにつき、平成20年4月ないし9月にかけてY1証券から4種類の仕組債を4回購入した。しかし、いずれも参照銘柄の株価があらかじめ定められていたノックイン水準以下になり、各期限前償還判定日にあらかじめ定められたノックアウト水準以上にならなかったため、中途売却または償還によって損失を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事案です。
争点は、適合性原則、説明義務違反です。
本判決が、適合性原則違反については、本件各商品の購入による損得を適切に判断するために、相当高度の投資能力が要求されるものであったと指摘されました。ところが、Xの年齢や認知症に加えて、その投資以降、財産状態および投資経験等の諸要素を総合的に考慮すると、適合性の原則から著しく逸脱していたことは明らか、としました。
そして、Xの属性、投資取引に関する知識、経験、財産状況等に照らすと、Xにおいて、本件各商品の取引に伴う危険性を具体的に理解できるような情報が必要な時間をかけて十分に提供されたとはいえないとして、Y1証券担当者の説明義務違反を認めた。ただし過失相殺3割。