民事控訴審について
民事控訴審について
シュシュ:日本は三審制なんだよね。
弁護士:うん。でも事実上は事実認定の争いがほとんどであるから、高裁で終わり、つまり二審制が採用されているね。
シュシュ:最高裁はどうなっているの?
弁護士:平成7年の民訴法改正によって、最高裁に上告する理由がとても狭くなったので、今は、憲法違反と最高裁が関心があるテーマのみ取り上げられる、ということですね。
陪席裁判官で民事事件に携わった裁判官は平成7年前後で運用も変わったといっているよね。
シュシュ:ゆったりした感じだね。
弁護士:平成7年以降、東京高裁判事に聴いたら、ほとんど一回で結審するのが7割から8割という体感ということです。原審で、争点整理と主張立証が終わっていることを前提に訴訟指揮をしているからですね。そうすると、原審が相当か否かという観点からみているということです。また、証人尋問もほとんど採用されません。
シュシュ:逆転裁判するにはどうしたらいいの?
弁護士:控訴審ということになるとほとんどアファームといわれているのですが、3割は和解、変更は2割が統計上の数字で5割くらいがアファームされているくらいなんですね。
シュシュ:一回結審だから控訴棄却になるとも決められないね。
弁護士:高裁での和解は、原審の出来がいい場合は和解にならない、のですが、原審に問題があったケースは和解になるケースが多いといわれます。
シュシュ:どうやって裁判をするの?
弁護士:まあ、裁判官の心わしづかみということだよね。傾向と対策。
シュシュ:受験勉強みたいだねー。
弁護士:合議といっても、3名の高裁裁判官で合議するのではなく、主任の陪席裁判官と裁判長の2人で合議で決めているようです。主任と裁判長で意見が異なる場合にもう一人が加わる程度です。
シュシュ:キャスティングボードを握っているのは陪席裁判官だね。月10から15くらいは和解をする必要がありますので、いそがしいと思います。
弁護士:高裁の裁判官はいそがしいので、陪席は、原審に親和性を持っているという予測のもとに心証を形成していることが多いと思います。だからまずは原審は正しいという前提があって、それを引用してラクができるわけなんですね。
シュシュ:そうでないためにどうしたらいいのか、ということです。高裁では裁判長の個性が強く出ます。事実上最後の勤務地であるので雑音を考える必要がないから自分の考え方で出しやすい、ということですかね。
弁護士:そういうことなので、裁判長や陪席裁判官の傾向を掴み、高裁の判決は裁判長の個性が色濃く出る場合が少なくないと思うのです。
シュシュ:裁判官はどういうふうに心証を形成するのかな。
弁護士:昔は原審記録をじっくり読んで、最初から検討したうえで、原審を読むということをやっていたのです。ところが、現在は手抜きといったらなんなんですが、主任裁判官は原審をずばり読んでしまいます。そして、原判決に記載されている証拠等を確認することになります。その段階で、原判決に問題あるかないか当たりをつける。また、ぱっと裁判官名を見て、ああ、この人は気を付けないといけないな、ということもあるのだそうです。
裁判長は、同様のことをして合議に備えます。
シュシュ:裁判所は1週間前にはもう結論を決めているんだね。
弁護士:原審で、一方的で原告勝ち、被告負けという判決は、被告のことはどうなっているのかな、という点をみます。なのでバランスもみられるということですね。そして、控訴理由書が来た時にサプライズがあって、ああ、そういうことがあったかということで、こういう見方があるのか、ということで変わることもあります。
シュシュ:まずはどうするのか。
弁護士:実は形式面からなんだ。原記録をみて、弁論更新はしているか、裁判所と書記官の間違い、裁判官の間違い(異動後)はないかなど形式面を点検することになります。そういう形式面は破棄事由になります。
シュシュ:あまり本質ではないね。敗因分析は?
弁護士:民事訴訟も続審とはいわれているが、実際は事後審であり、原審が正しいのか間違っているのかというアプローチで審理していくということになります。そこで、原判決がどういう流れで結論を出しているのかを把握する必要があります。
原判決が間違っているということであれば、原審の立論、また時系列表などを点検することも重要と思われる。そしていずれのストーリーが合理的であるのか、ということです。
原審は、前提事実を読み込むことがいいですね。前提事実というよりも争いがあるし証拠に基づいていないというケースはあります。
シュシュ:マニュアルは分かったけど、どうしたら逆転裁判になるの?
弁護士:新たな視点、違う角度からの検討をしてみることが大事で、切り口によっては新たな視点を提示することができれば高裁で結論が動くということがあります。
シュシュ:ふむふむ。訴訟物を変更、新たな証拠が王道だね。また、証拠の評価を間違えているとか、有用な事実を見落としている、経験則違反、業界の経験則だよね、裁判官の誤った先入観を持っていたのではないか、そういう先入観も一応考えていることも必要、ということを難波孝一元東京高裁部総括判事は指摘していますね。
シュシュ:控訴理由書はサプライズなのかなあ。
弁護士:パソコンの発達で一審の最終準備書面と同じのものがあるものがあります。まあ、気持ちはわかりますが、裁判所としてサプライズはないので、和解狙いかな、という風に受け止められると思います。逆転は難しいというようにも思われますね。新たに書き下ろすくらいの方が良いでしょうね。
シュシュ:総花的な方がいいのかな。
弁護士:弁護士はこわいからねえ。論理的なまとまりがなくなり、本命の主張の説得力が下がる、ということもあるらしいですね。20枚を超えるとなるとサマリーを提出するなどですね。
シュシュ:誤字脱字とかは?
弁護士:修正されておしまい、ってことが多いのですが、あまりに誤字脱字が多い場合は結論もおかしいのではないかと思わせることを指摘することもあり得る。
シュシュ:控訴理由書は、事実と評価を意識して区別して書くというべきである。そして事実の場合、高裁の判決でも、これを使って判決が書けるのです。書面を書くときは、事実と評価を意識して区別して書くことが重要です。事実と評価が混在していると、かかる事実は控訴人からみた事実ととらえられてしまう。一方的に自分のことをいうのではなく、損なところにこの証拠は、なるほど、争点との関係では不要であると弾劾しておく必要があるということだね。まあ、事実に基づいて新たな切り口みつかるといいね。