限界にっぽんと労働契約法の改正①
みなさんは、昨年31日に掲載されました朝日新聞の「限界にっぽん」をご覧になりましたか。
記事の中では、パナソニックの中に「追い出し部屋」と呼ぶ部署がある、とされています。
しかし、会社側は「受け止め方の違い」であると、退職強要をするものではないとしています。
それだけではありません。
記事では「朝日生命保険が4月に新設した・・・チームでの仕事は」、なんと自分の出向先を見つけることだというのです。
記事では,大阪府における正社員の割合が低下しており非労働人口を加えると,2~3割になるのではないか、という印象を受けました。
この記事については、いろいろなとらえ方があると思います。しかし、仕事がない、退職強要はしていない-ということが真実であると仮定すると,日本社会の終身雇用の光と影のうち影がよく示されていると思います。
仕事がない、退職強要もしないというのでは、仕事がない人を企業は抱え続けないといけないということになります。これは,日本の場合、解雇権濫用の法理というものがあり、解雇が原則的に禁止されているという厳格な法制となっているからということになっています。
いろいろな意見はあると思いますが、私は、若い方々の雇用はどうなってしまうのだろうと考えます。正直、仕事の量が減っているときだからこそ後進を育てるチャンスなのではないか、と思ってしまいます。
例えば日本郵政は毎年1200名の新卒を採用していました。これが、2012年度は中止となってしまいました。背後には、パートの正社員化を進めるという意図があったようです。
結局削られたのは、若者の雇用ということでした。もともと人気があったのに1200名枠がゼロになれば大変だ、というのは、簡単に分かるところです。
簡単には割り切れません。しかし、パナソニックで長年勤務していた方だからこそ、中小企業で経営幹部として働く道もあり得るのではないか、とも思います。
自分の出向先を探すのが仕事だ・・・というのは企業にとっても、働く方のキャリア形成からも相当ではないのではないかと思います。
若者の非正規雇用というのは1990年代半ばから上昇をしており、およそ1756万人のうち414万人が若者の非正規雇用です。
パナソニックの例をみる限り、終身雇用を前提とした解雇権濫用法制の影をまざまざと見せつけられた思いがします。
古市憲寿の論考を読んでいると、日本でしか成り立たない若者論というのは、アメリカの人種・性別差別が日本では世代差別となって現れていることを示唆しているように思います。
若者の雇用を増やしていくためには、硬直的な法制から柔軟性のある法制にシフトしていく必要があるのではないかと思います。
この点は、内閣官房参与を辞任する際の湯浅誠氏の辞任のあいさつの中でも触れられています。
彼の論旨をまとめると、これまでの日本型の傘に入らない人がとても増えている。
といっても、傘を広げるわけではなく、新たな傘の整備を急ぐべきで、その際は財源の裏付けが欠かせないと主張しているようです。
評論家の勝間和代氏は、解雇権濫用法制の緩和という問題提起をしているようです。
むしろU30以下ではその方が仕事が増えるのではないかという考え方でしょうか。OECDにおいても、所得格差は、正社員の保護が手厚すぎて企業は非正規への依存を強めざるを得ない、と指摘しており、企業に正規雇用の誘因を失わせていると指摘しています。そして、OECDもまだ、有期などの雇用保護の向上と正規雇用の保護緩和をするよう日本政府に勧告を行っています(OECD2008)。
それにしても、人間尊重の松下幸之助爺が、現在のパナソニックの「追い出し部屋」をみたら、何をいうのだろうか。
爺は「誰も解雇しません。みな家族やないか」と涙を流して訴えた一方で,「日本の各会社がいたずらに余剰人員をかかえて手放さない。いや手放せない」ことが「日本経済の発展の一つのブレーキ」になっているとも指摘され情熱と冷静の間にいると思います(松下幸之助「物の見方・考え方」)。
そして、それに対する処方箋も爺に聞くことができたらと何とおっしゃられるのでしょうか。