同情する水野参事官のツイッター問題
復興庁の水野靖久参事官が、ツイッター上で市民団体や国会議員に対し「暴言」を吐いていたことが問題化している。報道を受け、菅義偉官房長官は2013年6月13日の記者会見で、事実確認の上で処分を行うとの見解を示した、とのことです。
発言の内容で最も問題にされているのは、集会での感想について、左翼がであるとか、知性のなさに哀れみを感じる、といった趣旨のツイートのように思います。
また、彼は国会議員からの質問通告を「被弾」と呼んでいて「被弾なう、これから職場に戻ります」というようなツイートもしていたようです。
水野参事官のツイッターの内容については、明らかにされず新聞記事では「ツイッター暴言問題」とされたり、「ツイッター中傷問題」とされたり、真実がブラックボックスにいれられてしまって増長されている面があると思います。
そもそも、憲法は21条で表現のj自由を保障しており、表現内容の自由も保障されています。彼も公務員とはいえ、政治的な意図をもった発言でもないので、公務員の自主性と自律性を論拠とした表現の自由の制約をすることもできないと思います。
もちろん、職務中のツイートは問題にされると思いますが、表現内容を理由に処分をすることまでは行き過ぎではないか、と思います。
ポイントはツイッターが匿名であったのに、メディアの側が発言者の個人情報を特定して、匿名を条件とした発信を水野参事官の発言と結びつけたというところにあるのではないか、と思います。
水野参事官のツイートは被災者の方々がみると不快に思わせるものでその点は残念だと思いますが、匿名であること、特に国会議員の質問通告のルールが守られていないこと、勤務が深夜までおよぶこと-などの問題点を示唆的に提起しているものとも評価できると思います。
個人的な感想としては、個人が匿名でブログやツイッターをやる文面の内容まで検閲をして、それを理由として懲戒処分をすることが許されるのでしょうか。懲戒処分は国家行為ですが当然憲法21条が適用されることになります。
私は、今回の問題はみだりに「暴言」「中傷」などと決めつけないで、思想の自由市場の中で暴言を受けた、中傷を受けたと考える人は、それこそツイッターで対抗言論を行えば終わる話ではないか、と思います。そもそも、人間にはペルソナ(外に向けた仮面のこと)があるので、匿名での表現はペルソナを外しがちです。でもこうした本音を話してもらえることが発信することの意味ではないか、とも思います。
毎日新聞は、表現内容を理由に水野参事官が国家行為として処分を受けたとなると、今後は自分たちの表現も、表現内容を問題にされて批判され、行政の介入を招くリスクを作ったことも自覚した方が良いと思います。
それにしても、匿名で本音を語ってくれる人のブログやツイッターは、参考になることが多いけど、かえって国民が復興行政の実情を知る機会を失わせるものにしかならなかったのではないか、と思います。
匿名での発信記事に対してその発信者の個人名を暴露することに、それくらいの公共性があるのか、というと疑問を感じます。また、左翼の・・・という発言も、あの手の集会というのは、現実にそういう方や同じ事を繰り返して自分の一方的な意見の受け容れのみを声高にさけび続ける人も多いと思います。しかし、責任ある行政官として一部利益のみを実現することに尽力するということもできない、と思います。
そういうところから出た愚痴めいたもの、ということであれば、多少、不適切な面はあってもフェアコメントとしての逸脱の程度は低いのではないか、処分するまでのことはないのでは、と考えます。
もっとも、社会に対する信頼低下という問題とどう立ち向かうか、ですね。ある本でIT系の社長の本を読んだとき、色々問題になるかもしれないけど、感情の整理のためにブログやツイッターには、嫌なことでも書いてしまった方が良いし、それが仕事をしている自分とイコールじゃない、みたいなことをいっていた気がします。
そういう実名をつけて話すことはできないけど、匿名であれば客観的に仕事はきちんとやっているのですが、こういうことがあって気持ちは傷付いています、というようなその人の心持ちを安定させる効用もあるわけです。
会社として匿名ブログやツイッターまでどこまでフォローするのかという問題もあります。今回は、匿名記事であるのに実名を明かしたマスコミに問題があるように思えてなりません。かえって、彼らの行為は匿名を条件とした記事の実名を承諾なく暴露するのですから名誉毀損になってもおかしくないのではないかな、と思います。
被災者の気持ちに寄り添うということは重要なことですが、大事なのはきちんと仕事をしてくれるかどうかです。気持ちに寄り添うだけで仕事をしてくれない人もめずらしくないので、そんなにいじめる必要があるのだろうか。今後の検証としても言葉狩りでなく彼がきちんと仕事をしていたか否かにも光をあてた報道を望みたいです。