中小零細企業が設立された理由?
さて、日本には多くの中小企業がありますが、多くの中小企業は税法上の有利選択のために法人を設立しています。
結構個人商店にみえても法人になっているケースがあります。
歴史的経過としては、昔は個人事業主であっても「みなし法人課税制度」というものがありました。これによると個人事業主も給与所得控除がありました。
こうして経費と給与所得者控除の二重取りを認めていましたが、平成4年に「みなし法人課税制度」は廃止されましたので、これを機会に法人設立が増えたように思います。
当たり前ですが、このようなインテンションですと、経営者は、年間の利益を予想して、それとピッタリの役員報酬を設定するということをすることになります。
なぜなら、法人に利益を残してしまうと、法人税が課税されること、内部留保についても将来清算所得に課税が生じるからです。
また、役員報酬を家族に分散することにより累進課税による適用課税の税率アップを防ぐことができるということがあります。
理論的にいえば、個人事業の場合、所得税、住民税、事業税がかかります。税負担は約4割といわれています。
そこで配偶者に給料を支払うことになります。専従者給与と呼ばれています。専従者給与を支払う理由は、所得分散による税率を抑えること、給与所得控除の理由の2つです。
個人事業主の人は給与所得者控除はありません。しかし、妻は給与所得者控除を利用できます。また、所得を分散して税率を軽減するというのは分かりやすいところですね!
これを推し進めると、法人設立となります。なぜなら、法人を設立すると、所得を3つに分けることができます。会社、自分、配偶者という形です。
3つに分ければ、税率軽減も有利なようにできる、ということに加えて、経営者自身も給与所得者控除が利用できるようになるのです。
こうして、課税される価格が低くなりますので本人の所得税が安くなりますし、事業税もいらなくなりますので、結構な税金が安くなります。
実は、街の八百屋さんや食堂もなぜか法人になっているのは、税法上の理由が大きいですのですが、せいぜい本人の税金+事業税で、3000万円の所得の場合約170万円程度が節税になります。
もっとも、これからは、あべこべの現象が起こりますので、会社の設立自体は減らないでしょうが、すべてを役員報酬に回すメリットはなくなりつつあります。
私の関与した会社でも、利益が出ると、賞与としてばらまいてしまい内部留保ゼロをモットーにする会社がありました。
しかし、法人税の税率は中小企業の場合、800万円を基準に別れています。これ以外の税金を加えた実効税率は概ね800万円以下は25パーセント、それ以上は35パーセントです。
ところで、所得税の方は他方で増税となっています。復興特別税が25年間も上乗せされます。
また、役員の給与所得者控除についていえば、245万円が限度額となりましたので、1500万円以上の所得の場合、それほど給与所得者控除のメリットがなくなったということになります。
さらに、今後、給与所得者控除は段階的に引き下げられ、2017年のMAXは、220万円になります。
したがって、役員報酬が高いと所得税も高くなる、ということになりますから、これまでの会社の利益をゼロにして、なるべく役員報酬で受け取るという時代は、だんだん終わっていくと思われます。
むしろ、会社内部に内部留保を残しておく、ということが中小企業にとってもある程度の流れ(といってもメジャーになるとは思えませんが)になると思われます。
今後は、法人なりした企業が「個人なり」するか、はたまた所有と経営がある程度分離した中堅企業化していくかに論理的に分かれていくと考えられます。