パククネ氏の逮捕と共謀罪(テロ等準備罪)―やはりおかしいのでは?

朝日新聞の取材によると,韓国の検察は3月31日早朝、前大統領の朴槿恵(パククネ)容疑者(65)を逮捕したという。サムスングループの事実上の経営トップでサムスン電子副会長の李在鎔(イジェヨン)被告(48)らから巨額の賄賂を受け取ったり、支援者のチェ・スンシル被告(60)に大統領府の機密文書を流出させたりした疑い。チェ被告の国政介入に端を発した一連の事件は、前大統領の逮捕に発展したというものだ。

私は、韓国の刑事法に詳しいわけではないが,事実上母法が似ていると建付けも似るものだ。逮捕は、犯罪事実が証明される必要があるのではなく、犯罪が成立するの証拠準備手続であるが、逃亡や証拠隠滅の恐れがあることに加えて,全くの逮捕事実の基礎が欠落していたら、どの国の刑事司法も逮捕は認めないだろうから,勾留裁判所は,一定の嫌疑があることを認めたわけである。

 

しかし,つい最近まで大統領だった人が13の罪で逮捕されるというのも、なんとも異常な話だ。大統領に権限が集中しているからだろうか。必ずしもそう思わない。

 

 

苟も日本でも、安倍首相夫人をめぐる疑惑が報道されている。要するに、安倍首相に近い保守系グループが,「安倍晋三記念小学校」を作るというもので,不思議と基準をクリアしていなかったのに,大阪府知事の鶴の一声で基準が緩和され,国有地は,基準価格の数億を下回る価格で買収でき、対象者は巨額のキャピタルゲインを得たことになる。

しかし,テロ等準備罪、つまり共謀罪ができれば、要するに大阪府の松井知事がいっていた「忖度」が共謀になる可能性があることをパク氏の逮捕は示したものといえる。現実にパク氏が漫画のようにサムスンからワイロを手でありがとね、ともらっている可能性は低い。現実に100万円を渡したという疑惑がもたれているのも昭恵氏であって,安倍首相ではない。松井氏は良い忖度と悪い忖度があるといって、一番悪いのは安倍首相と述べたが,結局,そういうことなのである。共謀というのは、犯罪共同遂行の合意があって,黙示でも良いというのが最高裁の決定であり,明示的に拳銃をもっていることを認識していなくても多分もっているだろうくらいの認識でも共謀を認めて有罪にしているのが日本の裁判所である。当然法的解釈は同じになるだろうから,今後,こういう明示的ではない「忖度」も結果が悪ければ共謀罪に問われ,テロの準備とされるのだろうか。パク氏の主要な罪名はほとんどが共謀共同正犯、つまり共謀罪だと思われるのだが,これではほとんどが結果論を問うものになってしまうのではないか。構成要件的しぼりが必要であり,刑法特有の形式要件を具体的に定める必要があるのではないか。

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