「テロの温床」-起業と差別、むき出しの好奇心と戦う
毎日新聞12月10日は、ストーリーと題する記事で「起業で差別と闘う」という記事を掲載している。
甥っ子が住んでいるブリュッセル。グランプラスの街並みを思い出さずにはいられないが、「テロの温床」-その片隅、モレンペーク地区はそのように呼ばれているのだという。
理由がないわけではない。パリで起きた同時多発テロ。パリに近いブリュッセルの情勢や現地からの報道では逮捕された容疑者などは、ブリュッセルからやってきているというのだ。パリ同時多発テロ。モロッコ系移民にルーツを持つ男子たちがイスラミックステートに感化されテロを行ったものだ。モロッコは、1960年代、労働力不足を補うため移民政策をとった。その後、単純労働者のみが取り残される結果となったのだ。
それからのフランスは、つい最近まで、非常事態が宣言されていて、あちらこちらに武装警察官のパトカーなどがいた。同報道によれば「起業して収入を得ることで差別・偏見と闘うー」というのだという。その道のりこそ、むき出しの好奇心や嫉妬心、まるで容疑者扱いされている中でむき出しの好奇心との闘いでもある。「何が彼らを突き動かしているのか」
毎日新聞の報道によれば、130名が犠牲になったパリの同時多発テロの実行グループの容疑者は10名。その多くは自爆したり実行犯以外は逮捕されたりしている。
「フランスの作家ユゴーが世界で最も美しい広場と称賛したブリュッセル中心部のグランプラス。」しかし、グランプラスは職業団体、いわば「既得権の象徴」の広場でもある。そのほとんどの建物がギルド組合の旧建物だ。
件のモレンベーク地区はグランプラスから10分ほどのところにある、という。街自体が小さいので、それほど驚かないが、名古屋駅まで10分といわれるとびっくりするかもしれない。
私が、パリとブリュッセルを一緒に訪れるが、メンタリティはとてもよく似ている。人種のサラダボールであるという点も同じでイスラム系が多いというのも同じだ。そして彼らの失業率が高いことも・・・。
毎日が取材する主人公の転機はテロが起きた2015年に起きた。起業のチャンスが起きたというわけだ。だが、その後のブリュッセルは空港でターミナルがほぼ全壊となり悲惨だった。容疑者グループは、モレンベーク出身者と疑われた。
ゴルフのカードの運転ができなさそうなトランプ。トランプは、モレンベークを「ヘルホール」、要は地獄の巣窟と呼んだのだという。
もっとも、こうしたベンチャーの取り組みは、グランプラスに居座る「守旧派」との戦いであり、トランプのような「ヘルホール」などと「ぼーーーー」として、中身を何も見ようとしないオールドエコノミーとの闘いでもある。
日本の沖縄も失業率は高いが起業率は高い。それを「ヘルホール」といっている者もいるのだ。そして、主人公は国連演説をする予定だがアメリカへの入国を拒否された。逮捕者が多いモレンベーク地区の出身であることを問題視されたものと考えられる。
「差別がつらい」仲間がそう話す。むき出しの好奇心でアメリカの保守系メディアなどのゴシップ・メディアは、好奇心満々と敵意、現実的悪意に満ちた報道だ。最近、ベルギー人に対するアメリカ入国の厳格化は甥っ子がベルギー国籍のため他人ごとではない。
起業には、保守派との対立や軋轢が避けられないし、企業家はお金持ちの社交クラブだ。起業家の集まりとは違う。差別はあるし、実力をつけたら、かってのBAとヴァージンの争いのように、つぶしにかかられるかもしれない。しかし、社会のせいにすることなく、自己との向き合いからおのずと自ら進むべき道が見つかるのではないかと思う。
服部弁護士(愛知県弁護士会)