相撲協会ーヒステリックがすぎないか。

元横綱日馬富士による傷害事件に端を発した一連の問題で、日本相撲協会は被害者側の力士の親方である貴乃花親方に理事解任の処分をしたが、ここまで非常識な内容に法律家や有識者が揃いもそろって集団ヒステリーをとめることはできなかったのだろうか。

 

元検事がまとめた報告書はテレビで八代弁護士から酷評されていたが、貴乃花はどうして処分されないといけないのか。

 

元検事の言い分によると、巡業部長でありながら巡業中に起きた事件を協会に報告しなかった。また、暴行の被害者である貴ノ岩や親方本人の事情を聴きたいという要請に長い間応じなかったことが解任処分の理由である。

 

これらは、忠実義務に由来する報告義務違反ということになるだろうが、些末な報告義務違反で解任処分が結論づけられることに異様の様相を呈していることは明らかである。例えば、池坊保子氏は漢字検定協会の理事長を解任されているが、これは、池坊氏の資産を用いて協会の主催イベントを行い、利用料を受け取るなどの利益相反行為、わかりやすくいえば協会を食い物にしたという任務懈怠があったといわれている。報告義務違反と社団を食い物にするとのでは、後者の方が情状・態様ともに悪質であり、かつ、当然、しかるべき利益相反が起こる報告など理事会にしていないことは明らかである。こうした過去の池坊元理事長の所為と比較すれば、本件は、理事を解任するべき解任事由が生じていたとは到底いえない。

 

朝日新聞は、処分は妥当だというが、日馬富士の引退勧告相当と同じく併せると妥当、というのだが意味不明である。

 

本件の本質は、ひとえに相撲協会や池坊保子氏の「暴力なんて大したことない」という悪しき因習が未だ相撲協会にこびりついていることの裏返しであった。また、一連の報道で、八百長的なものがあるのではないかと疑われるモンゴルでのテレビ番組が報道され、八百長VS真剣勝負の各派閥争いという面も出てきた。

 

私は、司法修習のころ、大相撲の傷害致死事件を担当したが、結局、相撲協会は何も変わっていなかったということである。本来は組織的問題であるはずだが、個人責任にすりかえて「礼を失する」と池坊氏の道徳攻撃にどれほどの人が説得を受けるだろうか。

 

会社の問題というが、会社の問題であれば、勤務時間外に起きた暴行事件の場合、会社の上司が部下に付き添って警察に被害届を出すことはむしろ普通のことだ。今回は、報告義務違反を藉口して、警察に貴乃花が被害届を出したことの怨念からくる嫌がらせといっても良いのではないか。そして、個人間の人間関係もあるから、警察に被害届を出した際、貴ノ岩の意思が尊重されるべきであり、協会に直接貴乃花サイドから報告するかは、貴ノ岩には無断にはできないことだ。

 

こうした旧態依然とした相撲協会に対して、犯罪行為には被害届を出し、被害者として貴ノ岩が示談に応じるか否かというのも貴ノ岩や貴乃花が用意するであろう弁護士の意見に従って行われるべきことだ。だから、協会側からのあわてての接触要求は揉み消しや隠蔽を狙ったものとみてよい。現実に相撲協会にべったりの識者からは大ごとにすべきではなかったと貴ノ岩や貴乃花の被害届提出を批判する声があった。これをみると、犯罪被害者で、本来、略式になるかも怪しい事件について、そういう意図を持った貴ノ岩らの接触拒否というのは、引いてみれば合理性があることが明らかである。

 

また、報告、報告、というのだが、報告義務は主に経営事項に係ることであり、従業員、つまり協会員の私的な不祥事についてまで、いちいち報告義務が理事に生じるかは疑問である。ましてや被害者側の理事者にそのような義務が生じる余地はない。しかも、貴乃花は巡業部長だったというのは業務の執行者ということであり、むしろ、巡業部長に各人が報告する義務があり、理事兼巡業部長から理事会に報告するのが普通だが、だれも貴乃花に、加害者は報告していないのではないか。

 

もみ消そうとする意図が満載で被害者に泣き寝入りを迫り、「握手をしていた」と嘯く池坊保子氏など、被害者の観点からいけば信用ならない人間ばかりだったことは明らかである。

 

加えて、貴乃花がワイドショーに話さなかったことは正しい。ワイドショーと忠実義務は関係ない。世論もワイドショーに話さなかったから、記者様をバカにしていると驕り高ぶった朝日新聞は、「貴乃花親方の罪も重い」と論じるが、正気の沙汰とは思えない。自社のインタビューに応じてもらえないから意趣返しの社説だとしたら本当に正鵠を射ない幼稚な論説(1月5日付)だ。

 

今後、貴乃花の理事の再任があり得るかということだが、1か月で理事に解任したものを戻す程度の覚悟での解任であれば、それこそ社会慣習ではあり得ない。そのことは漢字検定協会を解任され、協会を食い物にする利益相反などで出入り禁止になったと報道されている池坊保子氏が一番ご存知なのではないか。貴乃花が理事に戻れるか否かで、裁判闘争が始まるかがおそらく決められるのではないか。

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