お役立ちコラム
最近、お知り合いの方から契約書のチェックを頼まれることが増えてきました。
そこで,いつも気になる点を指摘しておきたいと思います。
視点としては,①その会社に取引的なメリットがあるような体裁になっているか,②法的効果として取引に支障はないか,という2つからみます。
このブログでは,よくみられる初歩的な指摘をしたいと思います。
契約当事者が分からない。
例えば,新規事業に出資をするとか投資をするとか,そういう契約の場合,会社であるのか個人の代表取締役であるのか明らかになっていないということがあります。
実態的には同じなのでしょうが、法的には別人格であり,法的責任の追及を考えると別人格への追及はまず無理だと思っていた方が良いかと思います。
昔,法人格を利用する巧みな詐欺師を相手に訴訟をやりましたが,裁判所もそのインテンションに気付きながらも法人格否認の主張は排斥されてしまいました。
逆にいうと,法人格の違いは,特に新規取引の場合などは個人なのか、会社なのかというのは意識して欲しいと思います。個人事業とは別に別会社を立ち上げて新規事業をやりたいというケースもあります。
同じようなことで企業グループの場合,どの会社と取引をするのかの確認は怠れません。持株会社傘下の会社の場合でも法形式には別法人なのです。
契約対象の事業活動はどこの会社がしているのか、資産や知的財産の所有者、親会社や子会社をも契約当事者に入ってもらうか否かは慎重に検討しないといけないと思います。
また,商社を介して取引をする場合も基本的には,契約は両当事者間で行われるのが通常ではないかと思いますので,契約当事者が思いがけず商社になっているなどということのないようにしないといけません。
それから,調印者の問題があります。中小企業の場合、いろいろな事情により奥様が代表取締役であり,夫は取締役でもないが対内的にも対外的にも「社長」と呼ばれているなど,様々なケースがあります。
以前,読売新聞社で問題になりましたが,部長クラスに法人を代表する権限があるかどうかというと,原則は代表取締役であり,あるとしても業務を担当している取締役が法的に認められる限度といったところで,
部長クラスの場合は,実体的な支配人に該当するか否かという難しい問題もありますから,代表者から代理権が与えられているのか,実体的な権限の有無が問題となります。
特に社内の風通しが悪い会社というのは、勝手に部長が契約して社長が撤回を申し出てくるというケースもあります。
このように,契約当事者にはよく注意を払いましょう。
最初は惚れ込んで契約を締結したが,相手方が買収,事業譲渡,代変わりによって主体が変わってしまうこともあります。
倒産や売り掛けの焦げ付きは想定の範囲内であっても,取引や開発研究上欠かすことのできないキーマンが転職してしまうこともあります。
そうした方に惚れ込んで契約をするということになりますと,契約の解除事由などに,こうしたことを意識した規定をすることが大事です。
それにしても新規開業の法務支援をしておりますと,大企業の相手の仕事の場合,契約当事者の担当者が異動してしまうと遅々として話が進まなくなり,断られることもあります。
担当者の異動は,相手の取引感覚の変化を招き、相手方が意外な行動に出てくることがたくさんあるわけです。
それだけに迅速な契約締結が必要になるということになりますが,逆にいうと契約を締結した以降は事情を知っている人は異動していなくなってしまうわけです。
そういうことも意識して,契約書で全容が把握することができるようにしておいた方が良いと考えられます。
それにしても,契約内容で揉めてしまうと,陳述書をいただきに大阪支社にいったり,出張の際にお会いしたりと結構大変です。
契約当事者は中小企業では半永久的にいるので,それを前提としがちですが,相手を知りましょう。
彼を知り,己をしれば百戦して危うからず。
最近、「チャイナリスク」という言葉をよく耳にするような気がします。
プライムニュースやWBSで特集していたから、というのもあるかもしれません。
とはいうものの、トヨタや本田など消費者向けの目立つ商品の販売が減少トレンドの中で,ビジネスtoビジネスの製品の需要は堅調との報道でした。
しかし、尖閣諸島の問題をめぐって、島嶼防衛の要の那覇空港等からのスクランブルの回数は69回・・・。
こうした中、同友会の某製造業の方の報告を聴かせてもらいました。
このAさんの会社では、中国は製造をして輸入をしているだけ、ということで中国を消費マーケットとしてとらえていないとのこと。堅実です。
中国進出は、他社とのコスト競争で負けないために進出したとのことでした。その結果、価格競争で負けるということはなくなったといいます。
しかし、経営者の方の報告では、海外出張経費、製造原価の上昇、日本と中国で2倍の人員が必要などの問題点でチャイナリスクをあげます。
やはりすごいなと思ったのは、中国は、きちんと製品の品質を「見張り」にいかないと膨大な欠陥商品を作られかねないとのこと。毎月1回は視察にいく。
コミュニケーションもかねているが、特に取引の開始の際は絶対に視察にいかなくてはならない,といわれます。
彼がいうには、彼らには理屈は通用するといいます。そのために、高い品質を維持するための理由を説明して歩くのだそうです。
そうしたことは、契約書、いわばミッションステートメントのような形で文章にしておかなければいけないといいます。
彼らは書いてあることはやらないから、と。
こんなことをいうと中国人だけの問題か、というともちろん日本にも同じような問題はあるし、あったと思います。
しかし,現在の日本企業に比べると中国企業は引く手あまた。単なる金儲けであれば、品質にやかましい日本企業とは
付き合わない、のだそうです。
そうであるからこそ、中国における委託先の開拓も重要だといいます。
チャイナリスクを思うと、ひるがえって契約書作成の重要さがひしひしと伝わってきますね。
最近、なりすましによる冤罪被害が起きているとのことです。
特に、無罪を訴えて途中で気付いてもらえた方は不幸中の・・・ということかもしれませんが、
19歳の少年に至っては保護観察の処分を家庭裁判所から受けていたことが判明しました。
少年の場合は、警察での勾留に続いて、鑑別所に4週間から6週間も身柄を拘束されてしまいます。
一部の情報では、某大学を退学に追い込まれたとの報道もありました。
弁護士ながら冤罪のおそろしさを見せつけられました。ちなみに警察官は「罪を認めれば罪が軽くなる」といったというのですから怒りを感じます。
その後も少年の事件では、詳細な自白調書が作成されていたと日本テレビに報道されました。少年は誘導に乗りやすいこともあるので、特に注意が必要です。
さて,そうはいうものの、誹謗中傷を書き込まれた被害者の方はどのような対処をするべきなのでしょうか。
まずは、掲示板への投稿者に対する不法行為に基づく損害賠償請求や記事の削除請求を行うことが可能です。
実は私たちも、誹謗中傷の書き込みの投稿者を追いかけるにはIPアドレスを追跡します。したがって,警察の二の舞とならないように他山の石としなければなりません。
また、刑事手続として名誉毀損で刑事告訴をするということも考えられます。
また、掲示板管理者に対する損害賠償請求をすることも考えられます。もっとも、プロバイダ責任法3条1項によって、要は簡単に名誉毀損を防げるのに、それをしていないなど,
一定の場合でなければ免責されてしまうことになってしまいます。
さて、世の中では、朝日新聞VS橋下市長の論争が注目を集めているようです。これは、橋下市長の出自をあばき被差別部落の出身などと論じる論考を週刊朝日が公表したことに対して,
橋下市長が朝日新聞の取材拒否で対抗している、ということです。
この点、表現の自由の法理からいうと,橋下市長の発言は、とても興味を持ちます。
意見ないし論評の表明による名誉毀損については、意見ないし論評の基礎となった事実の重要な部分について真実であること又は真実であると信じたことについて,
相当な理由が存することが求められています。
しかし,思想の自由市場論からいくと,言論には言論で対抗するのが望ましい(カウンタースピーチといいます)のですが、世の中、そう発信力のある人はいません。
一般市民が自分のブログで反論を試みたところで朝日新聞にでかでかと中傷記事を書かれてしまえばひとたまりもないのです。
ところが橋下さんは、記者会見の場で朝日新聞記者に対して質問を投げかけ、ツイッターでも反論してそれがテレビに取り上げられるなど,対抗言論を成り立たせることができる希少な人物なのかもしれません。
ただ、表現の自由の法理によれば、朝日新聞によって名誉を毀損された橋下さんは「対抗言論」により名誉の回復が可能であるので、国家が救済する必要はなく当人たちの自由な言論に委ねるべきということとなります。
ですから、権力者VS巨大新聞の戦いは法的な解決にはなじまないのかもしれません。
しかし、あれだけ人権、と騒ぐ新聞でありながら、橋下氏の親族が被差別部落の出身などと誇らしげに報道する朝日新聞は「民主主義の敵」「日本国憲法の敵」といわれても仕方がないでしょう。
それにしても、子会社だから朝日新聞は関係ないという弁明は笑えてきました。それはもう少し出資を下げないと通用しない言い訳なので、100パーセント出資会社では滑稽としかいいようがない。
これは、潔く謝罪するのが、人の道でしょう。
以前、食べログに自作自演で高い評価をつけていた、という事件がありました。
心なしかその後、口コミ情報が減ったような・・・。
やはり利用者からすると、いったことのないお店の公正な論評が知りたいですよね。
とはいうものの、飲食店の知り合いがそれなりにいる私の身からすると、どこも飲食店の経営は結構大変です。
忘年会シーズンに向けて、盛り上がってほしいですね。
そういうことで、お友達が応援のために食べログのようなサイトに高評価をつけることは違法とする根拠はないように思います。
しかし、自分でやるのはどうなのだろうか。
飲食店の経営している友達に聴くと、案の定かなり気にしているようです。
自分で良い評価を付けたいなという誘惑にかられることもあるらしい・・・。
結論から申しますと、景品表示法の優良誤認、要は実際よりも良いものと誤認させる疑いあり、とされ景品表示法に違反する恐れが生じます。
法律違反の効果が重いわけではありません。内閣総理大臣が優良誤認を止めるように措置命令を出し、これに違反すると懲役・罰金があります。
しかし、現在の総理大臣野田さんはそこまで手が回るのだろうか・・・。
優良誤認といっても、見解の相違くらいではダメで、実際のものより「著しく優良」「事実と異なる」「不当に顧客を誘因」と要件はかなり厳格です。
しかし、法律違反よりも、飲食店は評判がすべてですから、あそこはホームページと全然違う、口コミは良いけどすごく悪いよ、という生きた評判の方が怖いと思います。
売り手良し、買い手良し、世間良し、が商売の鉄則だといわれています。
レストランは、おいしい、うれしい、を提供するスペースですから、騙されたら怒っちゃいますよね。
法律に違反するかどうかよりも、お客様に良い☆をつけてもらえるように日々是改善に努めるしかないですよね。
みなさん、頑張りましょう!
いま、東海テレビ・フジテレビ系列で日曜9時から「東京エアポート」という航空管制官のドラマが放送されはじめました。
昨年にフジテレビのCSで放送された「東京コントロール」というドラマがかなり作り込まれていて,おもしろかったのですが,高い評価を得て地上波に進出となったようです。
「東京エアポート」はまだまだこれからなので、どんなドラマになるのか楽しみです。結城主幹、矢野主幹は、前作から健在ですね。でも矢野さん、また将棋のこま汚された顔が見たいです。
日本は交通流が多くないのですが、アメリカでは子どもの職業の中でも航空管制官は上位にランクされるのだそうです。鉄道網が発達する日本と比べるとアメリカやヨーロッパは航空に交通網を依存しており、
管制官はなくてはならない職業だ、と意識されているのですね。
深田恭子さんが出ているドラマをみるのは何年ぶりだろう・・・。
しかし、弁護士と管制官、共通するのは責任の重さではないかな、と思います。
「あなたの指示する航空機には人が乗っているのよ」
という言葉は重くのしかかります。
大事な人生の節目に寄り添う弁護士としても心に響く言葉ですね。
テレビドラマにあった滑走路への誤進入なんてあるの~?と思ってしまうかもしれないのですが、一時頻発したことがあります。
もともと
滑走路手前で待機→ hold short of runway 34R
滑走路上で待機→ taxi into position & hold
と日本ではいわれていました。
しかし、別に関係ないと思うのですが、holdという言葉が同じなんですね。
だから、誤進入が起きたときから、滑走路上で待機は、Lineup & Waitに変更となりました。
ま、すっきりしますね~。
しかし、航空管制も弁護士業も業種としては、なくては困るもの、ではないかなと思います。
でも、そういうストイックな、あるいは、困難に直面していても、
Have a nice flight,Good day!といえる余裕。
心持ちが大事ですね。
是非ドラマご覧ください。
第1審東京地裁で、弁護士会会長が弁護士会会務に関連して支出した費用が否認され,これを認めるという判決に対する控訴審判決が平成24年9月19日、東京高等裁判所でありました。
この判決は、他のサムライ業のみなさんにも参考になるのではないかと思います。例えば、ライオンズクラブなどの会費は経費にできない、と税理士さんにいわれたことはありませんか。
私として一番問題視していた1審の「原告の事業所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、その業務の遂行状必要であること」という部分は取り消されました。
そもそも,経費には必ずしも直接性は求められないはずです。
この判決は論理的には複雑に作られています。
やはり弁護士にとって会務は、「事業所得を生じずべき業務」に該当しないといっています。
しかし、そうであっても、事業所得の必要経費に算入することができないか否かというとそれはまた別の問題であるとしています。
そのうえで,弁護士と弁護士会が別人格であるものの、役員等の業務の遂行状必要な支出であれば,
弁護士としての事業所得の一般対応の必要経費に該当するとしています。
そのうえで役員等としての懇親会費は必要経費として認める一方、会長選挙に立候補するための活動費用は必要経費として認めませんでした。
とはいうものの、経費の直接性は条文にも書いていない要件を付け加えるもので不当な東京地裁判決が見直された点は歓迎するべきではないかと思います。
起業された皆さま方のお話をうかがっていると、一度は経験するのが企画書の内容をそのままとられてしまい、
提出先の会社が「自分の企画」として大手メーカーなどに売り込みに行く,あるいは取引先が勝手に企画を使っている・・・
というパターンが多いようです。
頑張って企画書を書いたのに、それを流用されて他人名義として採用されてしまい自分には1円も入らない,
こういう悔しい思いをされているからもいるようです。
しかし、著作権は表現を保護するものではないのでアイデアは保護の対象にはなりません。
ですから、イラスト、写真等、建築設計図面などが含まれていない場合は、企画書に表されている
アイディア自体を守るというのはかなり難しいと思います。
例えば、設計の企画書であれば、表現の創作性があるということで、「地図又は学術的な性質を有する図面、図表その他の
図名の著作物」にあたる場合もあります。
また、企画の内容がパンフレットなどの編集物であれば、編集著作権を主張するということも考えられます。
数値的裏付けや工期に関するデータは著作物にはあたらないものと考えられます。
以上のように著作権が認められる範囲で、企画書を渡した業者が著作権を侵害しているか否かが問題となります。
この点は、両者を全体的に考察して、同一といえるかという評価が入り込みます。
ただし、この同一というのがくせ者で、ここが違う、配列が違う、ということで同一性を否定されて、著作権侵害を
否定する例も目立ちます。
この点、東京高判平成7年1月31日判時1525号150頁は、比較的広く同一性を肯定しましたが、原告が
広告会社であるという点も無関係ではないと解されます。競合の場合は、依頼主はすべての情報を得てしまいます。
それを流用しないという信義則上の義務を負っているという解釈の下、損害賠償請求を行うことは可能であると
考えられます。
契約書の中に、流用を禁止する文言を入れられるのであれば、それに越したことはないでしょうが、なかなか立場上、
盛り込むことは難しいとのご意見も頂戴いたします。
さて,最近は中小企業のみなさんも中国を消費マーケットとして,販売提携や販売委託によって,中国に進出しようという方々からの相談をよく受けます。
そして,そのときに「契約書の裁判の管轄はどうしたらよいのでしょう」と相談されます。
国際取引では、契約に適用される法律を当事者が選んでも良いことになっています。やはり日本企業からしますと準拠法は日本法にしておきたい、紛争解決についても日本の裁判所で,となるのが人情です。
日本企業と日本企業の提携であれば良いのですが、相手方が中国企業となると裁判所を決めるのは頭の痛い問題です。というのも、例えば、他の国の中には日本の裁判所の判決につき承認執行という手続をとることができ、日本の裁判所の判決を一定の条件で海外でも執行に利用することができる、という場合があります。
しかし、承認執行はお互いの国がお互いの裁判所の判決を承認しあうという関係にないとできません。残念ながら、日本と中国は、相手方が自国の判決を承認するという関係にはありません。
したがって、名古屋地裁で中国企業を相手に見事に勝訴判決を得ても絵に描いた餅となってしまうという可能性があるのです。ただし,当該中国企業の財産が日本国内にある場合は執行をするという例外がありますが、中国国内の財産に対して執行するのはできません。
そこで、中国の裁判所である人民法院を管轄として定めることも考えられますが、いろいろな事情によりこれは避けた方が良いように思われます。
おすすめしていますのは、仲裁機関で紛争を解決するという方法です。私も愛知県弁護士会の紛争解決センターの委員をしていますが、民間の裁判所で解決しましょうという定めということになります。具体的には日本商事仲裁協会、中国国際経済貿易仲裁委員会を選定する例が多いといえます。
8月下旬ころ、東京の東京税理士会館で行われました租税法学会に出席してきました。
学会では、先般の国税通則法の改正が取り上げられており、更正が可能となる期間が5年となり概ね更正が可能となったなどの改正点の報告がされました。
元・立命館大学大学院教授の三木教授は、日本は申告納税方式を採用しているのに申告ミスに対してとても厳しく接しているとの指摘がありました。
昔は、「当初申請要件」という要件があり、最初の申請書に書いてなければ、事後的に更正をすることはできない等厳しい取り締まりの発想での徴税が行われていました。
驚かされるのは国が税金を決めて、国民に課してくる賦課方式を採用している固定資産税などでは、比較的租税訴訟で成果が上げられているということです。
しかし、教授がいわれるように、申告納税制度というのは、国の国民に対する信頼を基礎に成り立っているはずです。賦課をする手間を省くのに協力をしています。
それなのに判例上、救済されるのは賦課方式のもの、固定資産税のものばかりというのでは、本末転倒ではないかという問題意識がありました。
申告納税なのですからミスをするのは当り得ることです。
今回の国税通則法の改正が、本来の理念に立ち返るものとして運用されるよう望みます。