お役立ちコラム
-法律サポーターでは,有期契約が無期契約に転換され雇止めができなくなり経営に支障を与える恐れを指摘してきているかと思います。改めて,どうして改正労働契約法18条は制定されたのでしょうか。
はい。主に雇止めに対する不安を解消するためと言われています。有期労働契約の契約期間が通算して5年を超えた場合,無期労働契約への転換を選択することができるものとされます。
-クーリング期間という空白があれば転換権は発生しないと聴きましたが事実ですか。
はい。クーリング期間に相当する空白期間が生じていれば,クーリング期間以前の契約期間は通算の対象から除外されることになります。クーリング期間後,新たに通算契約契約期間が5年を超えなければ転換権は発生しませんし,超えれば再び発生することになります。
-クーリングオフとは違うのですよね。どういうことなんでしょうか。
はい。クーリング期間は,同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間が一定の長さに渡る場合,クーリング期間として扱われ,同期間以前の契約期間は通算対象から除外されることになるわけです。
-クーリング期間を発生させるため,契約を派遣や請負に6ヶ月間切り替えるケースも出てくると思います。
理論的に申し上げますと,派遣や請負の場合「使用者」が異なるわけですからクーリング期間の対象になるということになると考えるのが論理的です。
しかし,労働法は法の潜脱というのを嫌う法律でして,形式的には「使用者」が異なっても,転換権の発生を免れる意図をもって法形式を「偽装」した場合には,「同一の使用者の要件」,つまり転換権発生の要件を満たすと考えられています。ただし,松下PDP事件(最判平成21年12月18日労判993号5頁)の影響もありますから,法形式を「偽装」したといわれてしまうのは,形式的使用者が名目的存在にすぎず,実際には労務提供先との間で黙示の労働契約が成立している場合ではないか,とも考えられます。
ただ,上記の判例は派遣労働者の派遣先との直接の雇用契約の存否が争われたケースですので,条文がある立法の解釈とは異なりますから,法形式を「偽装」というのは下級審ではどのような傾向が示されるか注目されます。
-うちはもう5年雇い続けているパートさんがいるのですが,転換権が発生してしまいますか。
いいえ。改正法に基づき契約期間の通算が開始されるのは平成25年4月1日以後を初日とする有期労働契約ですから,それから5年を超えた,すなわち6年目に転換権が発生し行使されれば7年目から無期労働契約になるということになるわけです。ですから,直ちに転換権が発生するわけではありません。
マンション管理組合の理事というのは突然なってしまい分からないことだらけ,という経験はありませんか。
マンションでは,共同で利用し管理・維持していかなければならず役割分担・ルールを定め決定をするのが管理組合です。
しかし,理事のみなさんにとっては,「ペット不可のマンションに犬が!」「騒音がひどい!」「粗大ゴミ部屋がある」「ゴミ出しのルールを守ってくれない」という日常のクレームの対処に迫られます。
弁護士は顧問弁護士として,管理組合の運営,管理規約や使用細則の制定,管理費の長期滞納者に対する対処,管理規約違反の区分所有者に対する法的措置,また当職は司法書士資格も有していますから,管理組合の法人化を実施したり,マンションの権利・利用に関する登記や権利関係の手続を依頼することができます。また,当職は税理士業務を行う弁護士と名古屋国税局に通知した弁護士であり税理士業務を行うことができます。会計理事や監事の業務負担の軽減,会計の信頼性確保などについても対応することが可能となります。
マンション管理組合では理事が長期間留任いたしますと修繕積立金の使い込みが発覚することもあります。こうした対応も弁護士であれば万全に行うことができます。私も最近,修繕積立金の使い込み案件を担当いたしました。
月額2万1000円で法律顧問契約(法律サポーターサービス)を受けることができます。
専門家のアドバイスをお求めの方は,月額9450円の法律アシスタンス契約もご用意しています。別途日当をいただければ必要に応じて理事会に参加することも可能です。是非,法律サポーターのマンション管理組合の皆さま宛の法務サービスのご活用をご検討ください。
私は,財団法人日弁連交通事故相談センター愛知県支部の交通事故相談センター委員会委員の委嘱を受けました。
交通事故の損害賠償の仕組みは専門的で複雑です。その基準も自賠責基準,任意保険会社基準,裁判基準とありますので,一般の方には理解が難しい面があります。
その結果,十分な賠償金が得られないまま終わってしまうことがあります。これは,二重の被害を受けたともいえるかもしれません。
弁護士に依頼すると,弁護士が本人に代わって相手方の保険会社と交渉しますので,物理的心理的な負担が少なくなるとともに,適正な賠償額を得られる確率が高まります。
また,中小企業の場合,経営者の社長、専務が交通事故に遭ってしまった,個人事業主が被害に遭ってしまい外注せざるを得なくなった休業損害(事業損害)も問題となります。
しかし,こうした休業損害についても認定は,機械的に行われ実態からかけ離れてしまうということがあります。
また,お忙しいためについつい十分な賠償金が得られないまま,示談書に署名をしてしまうということもあるかもしれません。
相手方やその保険会社と示談してしまうと、それ請求する権利がなくなってしまいますので,それ以上の損害賠償請求ができなくなるので注意が必要となります。
示談が成立するまでの間であれば、どのタイミングでもご依頼いただけます。
ご依頼いただいた時点での交渉の状況に応じて、その後はご本人に代わって相手方やその保険会社と交渉を継続し、心を尽くして妥当な解決につなげております。
また,日弁連交通事故相談センターの委員として公益的活動からも交通事故の問題に取組み,精進を重ね交通事故問題に強い弁護士を目指して参ります。
朝日新聞の記事に,「法曹養成,破れた理想」とあります。
しかし,この記事には,現場の弁護士としては,朝日新聞の希望が叶わなかっただけではないか,目的,目標,手段の区別がついていないのではないかと考えられます。
目的は,社会の隅々まで法の支配を及ぼすというものです。その目標としては,①良質な法曹を輩出する仕組みを作ること,②弁護士に対してアクセスしやすくすること,③弁護士にも保険制度を導入することなど金銭的負担を軽減する仕組みを作ること-ではないか,と思います。
法科大学院制度というのは,①の手段にすぎないのではないか,と思います。どうも,法曹が毎年3000人合格することができることを強みにして法科大学院制度を創設したというような形となっており,本末転倒といえるのではないでしょうか。
記事の作り方として違和感を覚えるのは,つぶれそうな法科大学院の関係者が「理想=3000人」と結びつけて声高な主張をしているという印象を受けます。
しかしながら,司法制度改革は,社会の隅々まで法の支配をおよぼすというものです。
そのためには,弁護士の人口を増やしたとしても,理想を達成することはできないでしょう。
次に,弁護士に依頼したいときにアクセスすることができる弁護士がいないという問題がありました。しかし,ゼロワン地域は解消され地域の隅々まで弁護士がいるという状態になっており人手の問題や適正配置の問題は解消されたと考えられます。
最後に,弁護士として活動すると経済的合理性がない,あるいは依頼者の正当の利益を守るものとはいえないケースです。正直なところ,朝日新聞などのマスメディアが,「司法制度改革の理念=3000人」と一方的に思い込んでしまうのは,こうした問題に取り組む弁護士が少ないという問題意識があるのではないかと思います。
しかしながら,経済的合理性のない事件についての依頼者の方のための弁護士保険制度などの創設がなければ,実際それに取り組むのは難しいでしょう。弁護士に対して仕組みもなしに手弁当での活動を朝日新聞が押し付けるというのは違うのではないか,と思います。朝日の社説は,「国際ビジネス,福祉,地方自治,犯罪者の社会復帰支援」とありますが,朝日新聞はあまり実態を知らないのではないかと思います。国際ビジネスは渉外事務所が多くやっていますし,福祉面では市長申立の後見をやっている弁護士もいますし,犯罪者の社会復帰支援については手弁当で保護司をやっている弁護士もいます。地方自治というのは意味不明ですが,公的な会議に弁護士がメンバーで入っていることも多いのです。それらがどれくらい「新しい分野」であるのかと思います。
また,主観的に請求権がどうにも成り立たないケースです。弁護士はあくまでも法的請求を通して依頼者の正当な利益を擁護することが使命です。したがって,法的請求が成り立たないという場合は,これは弁護士業務の範囲外と考えることができるではないでしょうか。
「夢,破れた」-というようなタイトルです。しかし,案件を処理してくると,怪しい新聞記者さんが近寄ってくることがあります。新聞記者というのは,それ自体は収益に何ら結び付かないのですが,広告収入や購読者からの収入で成り立っているので,私が,上で述べた2つの視点を新聞記者さんはあまり意識されないのではないかと思います。
朝日新聞はこの問題について,もう少し論理的に整理し直した方が良いのではないか,と考えます。
公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会は,消費者信用の利用者で,複数の債権者に対して債務の返済が困難な状態に陥った多重債務者などに対して,消費者保護の立場から公正・中立なカウンセリングなどを行い,その生活再建を図ることなどを行っています。
今般,私は,日本クレジットカウンセリング協会バックアップ弁護士の委嘱を受けることになりました。借金や事業にかかる債務などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
今日、愛知県弁護士会のあっせん仲裁人研究会が開催されました。
紛争解決センターという調停に似た手続を弁護士会で運営しています。
調停と同じことをしていても意味がないのですが,調停の場合は長期にわたって調停を行うということはあまり想定されていません。また,民事調停の場合は,調停委員が弁護士等の法律専門家,あるいは建築士などの専門家が調停委員になることもあると思います。もっとも,裁判官が背後にいて調停を調停委員を通じて運営していることになります。ですから,争いが大きいものであるとか,話し合いが2~3回で終わらないものについては,民事調停として成立しないことが多いのではないか,と思います。ある裁判官の寄稿したものでも,民事訴訟のように要件事実を目標にするものではない雑ぱくさから「つきあっていられない」と率直に書いたものもありました。
紛争解決センターの特色というのは,複雑な問題の調停に向いているということです。例えば,医療事件の場合には,センターには1年に約33件の申立がありましたが,これは名古屋地裁の医療集中部の件数と同じ程度といわれています。あっせん・仲裁人をサポートする意思専門委員が5名から26名に増えています。
調停委員が必ず弁護士となるため進行が要件事実を意識して的確になされ,長期の案件となっても打ち切られることなく付き合ってくれるというメリットがあるといえます。
複雑なものとしては,会社の内部紛争が親族の相続と関連している場合で、関連会社も複数あるというような場合です。こうしたものは,すべてを俎上に載せた解決が現実的であることが多いのですが,家裁では遺産分割をやり会社関係は地裁でやってください,といわれてしまうわけです。また,法人格が異なると,同族で実質は一緒という前提は公的な場では通用しないということになります。
こうした案件は,紛争解決センターは複雑な案件に向いており,かつ,柔軟な解決案を提案することができるということではないかと思います。
こうした紛争解決センターのご利用の代理に関しては,お問い合わせください。
システム開発契約の契約書をみる機会がありました。
システム開発契約ですが,「私はコンピュータのことはよく分からない」と発注側と受注側の認識の齟齬が気付かれないまま納品されてからトラブルという例も増えています。
専門の行政書士さんに話しを聴くと、結構契約書を作り込まれているそうですし,別の件ではありますが,見たものも発注側のリスクヘッジが図られている内容になっていました。
さて、法律的にはシステム開発契約というのは請負か、準委任かという問題を抱えることになりますが、これは受注側としては準委任的な内容の契約にしておきたいところです。というのも、請負ということになると瑕疵担保責任を負うことになってしまうのですが、システム開発には保守がもともと織り込まれている面があるからです。
瑕疵担保責任の問題ですが、請負としたとしても、商法の瑕疵担保責任のように早期の瑕疵の確認義務を課すものや、60日か90日に限定というものが多いようです。その性質上ランニングを始めてからバグを正していくというよう方が現実的であり、別途保守契約が結ばれているケースが多いといえます。この場合、瑕疵担保責任と保守契約が併存するような場合には、瑕疵担保責任の期間であるのに、保守費用を請求されるというようなこともあります。
ベンダー側としてもシステム自体に最初から瑕疵があった場合は無償で対応するような例もあり、瑕疵担保の期間経過後から保守契約の費用が発生すると定めている例がありました。
また、システム開発に関しては、「まったく役に立たない!」となってしまうと損害賠償請求額が高額になりすぎるという問題点もあります。ですから損害賠償額の制限を盛り込む例も多いといえます。少なくとも、報酬額を超える賠償責任は負わないとしておく必要があると思います。
このようにシステム開発の契約というのは,もはや立法に近いというくらい、オーダーメイドで決めておいた方が良い事柄かもです。後検討中の方は是非ご相談ください。
3月26日夜間
3月27日午後
4月2日午後
4月4日夜間
に法律サポーター弁護士による30分無料相談会を実施しています。
ご希望の方はホームページを見た旨を伝えて中小企業サポーター相談を受けたいと受付にお伝えください。個人事業主、法人関係の方は無料となります。
どうぞ、お気軽にご相談ください。
弁護士になってからというもの、損害論、特に逸失利益について考えることは少なくありません。具体的には,事業者の方が交通事故に遭われてしまって、事業所得者の逸失利益を算定することがあります。具体的には、事業主個人が働いて生み出していた部分の利益が対象となります。これを本人寄与分といい、逸失利益算定の基準は本人寄与分だけと考えられていました。とはいうものの、個人事業主の場合は、課税所得に所定の控除を持ち戻したものを参考にすることも多いと思います。
もっとも、交通事故に遭ってしまって働くことができなくても減価償却費、賃料、保険料、借り入れの返済などの固定費はキャッシュアウトが続くことになります。したがって、固定経費相当額も加算して賠償の対象とすることになる、という理解だったのです。
ところが、最近、とある事例でたとえ話で,分かりやすくいうと原発事故が起きてしまって避難を余儀なくされたときに法人としての営業損害をどのように計算するのか、ということを考える機会がありました。理論的にはあり得るわけですが、会社が交通事故に遭うことはありませんから,今まで考えてみたこともありませんでした。
法人の場合ですが、原則としては本件事故がなければ得られたであろう収益と実際に得られた収益の差額から,実際に出費を免れた費用を控除して得た額が逸失利益になると解されます。分かりやすくいうと、得られたであろう売上から実際の売上を引いて,減少した変動費なども引くというような理解になると考えられます。
休業損害の場合、交通事故の場合だと個人事業主は売上から経費を差し引いた「所得」を保障してもらうという印象が強いわけですが,たしかに従業員の人件費を筆頭に金融機関への融資の返済額、家賃などの固定経費のキャッシュアウトは続くわけですから,売上ベースでの賠償でなければおかしいのです。
問題はいつまで賠償してもらえるかです。交通事故での休業補償の期間で揉めるのと理屈は同じだと思いますが,事業損害となると多額ですからよりシビアな認定になるかもしれません。私が担当させてもらっているケースでもこの点が論点となっています。
この点、最高裁平成21年1月19日判決は、カラオケ店について浸水事故による営業不能を理由に損害賠償を求めたという事案だったのですが、約1年7ヶ月も休業していたということがありました。たしかに浸水ということでしたら、2~3ヶ月で修復工事を行い目途をつけることが可能だと思いますし、1年7ヶ月も休業するのであれば移転を考えるのが現実的ではないかと思います。
最高裁は、営業利益相当の損害が発生するにまかせて、その損害のすべてのついての賠償を加害者に請求することは条理上認められないとしました。いわゆる損害拡大防止義務を認めて賠償額を減額したといえるのではないでしょうか。もっとも、別のビルに移転するというのは商売をしている人であれば、そう簡単に移転したくないというのも人情でしょうが、それでも1年7ヶ月も休業するというのは度を過ぎているということなのでしょうか。2年分を認めた福岡高判昭和58年9月13日もあるところなので、なんともいいにくいところではあります。
しかし、原発事故などの場合、例えば1年7ヶ月経過したら、営業を再開しなさいよ、あるいは移転して営業するのが「条理」でしょうというわけにはいかないようですが、合理的期間には制限されるのではないかと考えられます。
これまで裁判員裁判は、2件ほど担当したことがありますが,GW前に3件目のトライアルがありそうです。
トライアルが迫っているから、というわけではないですが、原田國男さんの『裁判員裁判と量刑法』が目に止まって精読させていただきました。
原田さんといえば、東京高裁の元裁判官。高裁の弁護人ほどやりがいのない仕事はないといわれる中で原田さんの決まり文句は「弁護人の控訴趣意は認められない。しかしながら,職権をもって判断すると,原判決の量刑は現時点においては重きに失しているから破棄を免れない」として,なんだかんだいいまして弁護人の主張を多少なりとも酌んでくれるという点でした。
そんな原田さんは量刑法に関する専門家です。量刑法というのは研究者が少なく,事実上裁判員裁判が始まるまでは研究すらまともに行われてこなかったのではないかというのが実態ではないかと思います。そういう意味では院生などには是非、原田さんの『量刑判断の実際』などは呼んで欲しいと思いますし,私も控訴趣意に引用したりしております。しかし、量刑理論というのは裁判官もピンと来ないようで,ドイツの量刑理論を引いても分かっているのか、いないのか、という場面に出くわします。
新しい裁判員裁判の量刑の傾向は、全体として重いというのが弁護人をしている弁護士の感想ではないかと思いますが、氏の交通事故に関する新結果主義なる分析には正鵠を射るものがあるように感じました。
量刑の傾向としては,裁判官裁判とほぼ同様の量刑傾向を示している、そうです。
この書籍に励まされたのは以下の記述でした。
「さすが,弁護士は,人権そのものにかかわってくると銭金ではなく,本気で全力を尽くしてくれる。司法への信頼はこのような誰も注目しないような事件において実現されているのである・・・我が国司法の伝統的な被告人の改善更生こそが大切だという考え方が現れている」(原田國男『裁判員裁判と量刑法』(2011年、成文堂)206頁)