お役立ちコラム

高齢者の親族による預金払い戻しの可否

高齢者の親族による払い戻しは、いわゆる特別受益という法的紛争に巻き込まれる可能性が「大」です。

 

どうして本人がこれないかを聴いて、委任状があるかどうかを確認することになりますが、あまりに高額の場合は本人の意思確認をしなければ払い戻しに応じるべきではありません。意思確認をきちんと行う井部起用に思われます。

 

また、十分な意思確認ができない場合については、成年後見の申立をするのが原則というスタンスは崩すべきではありません。しかし、払い戻しを請求する者から損害塡補念書を徴収するというような対応も考えられるところです。

 

銀行としては、当該親族の説明が納得がいくか、多額ではないか、資金使途に疑わしい点はないか、ということを確認するべきように思われます。

高齢者にリスクがある商品を販売する場合の説明義務

元本割れのリスクや為替リスクがある金融商品を高齢者に販売することはできるのでしょうか。

 

当然のことながら知識が乏しく、投資について適時な判断ができるかどうかは一般的に疑問を抱く人が多いのではないでしょうか。

 

また特に元本割れのリスクについての理解がなされているか分かりません。そこで、商品説明書については重要事項説明書を交付し、家族にも説明し、書面に記録を残し十分な説明をすることが重要です。この点は大手の証券会社でも説明義務の不履行が認定された例がありますので、慎重に行う必要があります。

 

最高裁は、「証券会社の担当者が、顧客の意向と実状に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性の原則から大きく逸脱した証券取引の勧誘の取引をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為上違法となる」(最判平成17年7月14日)としています。

判例からすると、基礎商品が何か、上場商品であるのか、それらの特性、比例して顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態が考慮の歩ピントになるといわれています。また重要なリスクは説明しないといけません(金商法38条7号)。

高齢者は75歳以上について高齢顧客と定義され、80歳以上を慎重顧客として定義されています(日本証券業協会)。

 

高齢者は、家族に内緒でハイリスク商品を購入することがありますし、また急激に判断能力が低下されることもありますので、そうした体調面もチェックしておく必要があります。

投資の紹介者にも損害賠償が認められた裁判例

投資詐欺商法が問題となっていますが、今般、東京地裁平成26年1月28日が、紹介をした人物にも不法行為に基づく損害賠償を肯定したとみられる事例が公表されています。

 

当然、投資詐欺商法をしている会社の責任が追及されるのは勿論ですが、紹介者も損害賠償義務を負う場合があるので、注意が必要です。

 

法律的には、共同不法行為ということで、紹介者も損害賠償責任を負う場合はあると思われますが、現実に賠償を認めた事案は珍しいように思います。

 

認められた理由としては、本件取引の概要を説明したり、役員とのアポの調整をしたり、自ら連帯保証人になっても構わないなど、契約者が契約をするにあたり重要な役割を演じていたことがポイントになっているように思います。

 

取引が確実ではない場合において、損失を被らないかのような言葉で「紹介」をして出資を容易にさせた場合は、損害賠償責任を負うものと考えられます。

紹介者が損害賠償義務を負う場合についての一事例として実務上の参考になるように思われます。

同友会大崎室の会合に参加してきました。

昨日は、大崎室の会合に出席してきました。といっても、遅れてしまい二次会からの参加となりました。

 

ご報告者は公認会計士の方で、私も、個人的に主宰されておられた塾に参加させてもらい、経営理論やマーケティングの話をうかがって参りました。

 

今後は、いろいろご活躍のためのプランがあるようです。

 

今後、ますますのご活躍が期待されますね。

 

法律家だけではなく、介護、農園、清掃、タイル業の人たちが集まり、最後のユニットでの集まりでしたが、良い集まりとなりました。本当に同友ですね。このような縁をいただけることに感謝します。

掃除の仕方は残すものを選ぶ!

掃除の仕方で有名な講師の人のテレビをみました。

 

もともと著作が有名な人なので「知っている人だ」と思って拝見しました。

 

結局、部屋の中の様子というのは、実はその人の心の中の様子を表していることが多いように思います。

 

なので、少年事件を昔やっていたころは少年の部屋などを見せてもらい,直接的にしかるなんてことはしませんが,心理状態の把握の参考にしていた時期がありました。

 

さて,仙台の弁護士さんが弁護士会の法律相談センターの状況についてブログで書かれています。

 

http://jsakano1009.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-af8a.html

 

実は、実業の世界でも、何を残して、何を止めるかというのは、掃除のカリスマさんがおっしゃるようなことに通じるものがあるな、と感じます。

 

名古屋の状況は知らないのですが、移転前の相談センターは年間2000万円ほどの赤字だといわれていたような気がします。

 

震災や復興需要で法律相談のニーズが高まっている仙台の状況について紹介されています。

 

>>本庁所在地の法律相談センターの相談数は4449件(有料、震災相談、扶助相談、夜間土曜相談の合計)。このうち相談担当弁護士が受任した件数が僅かに132件。直受率は2.9%。弁護士紹介件数は216件。これを加えても直受率は7.8%(相談を経ない弁護士紹介もあるので実際はもっと低いが)。

 

この数字、体感していたとはいえ、少し驚いてしまいました。何分,法律相談センターの相談件数のうち、受任に結びついているのは法テラスが支援してくれている無料相談も含めて約3パーセント。弁護士会から弁護士を紹介するという制度が仙台にはあるようですが、名古屋にはメジャーな相談にはそのような制度はありません。したがって,一般に法律相談センターを運営している限り受任に結びつくのは3パーセント弱という結果には少し驚いてしまいました。

 

法律相談センターは税金で運営されているのではなく、弁護士会の会費から支出されていますが,受任率が3パーセントでは赤字に違いないだろうな、と改めて思ってしまいました。そして、相談件数が仙台の場合はそれなりにあるので存在価値はあると思うのですが、法律相談でお悩み解決となっている率がビッグデータをみる限り多いのだろうと考えてしまいました。

 

なお、名古屋でも法律相談センターを一部に限り無料化するという議論がありますが、指摘されているのは、「相談を無料化することによって件数が増えれば受任の機会も増えるということにある。しかしそうでないことは既に仙台弁護士会の震災無料法律相談で証明されている。無料化で増えるのは、本来弁護士の関与を必要としない日常の困り事、悩み事相談が主」と指摘されていて、参考になります。

 

カウンセラーの先生方がいうのは「初回はインテークといって、特に技術の高いカウンセラーでないとできない。逆に次回以降の方はそれほど経験がなくてもできるので,インテーク担当と継続のカウンセリング担当に分けているほど」とのことでした。つまり、最初の相談で適切なフレーミングをして,解決方法を提示して、それにしたがってアクションプランを作ってあげて,その取り組みを初めてもらうことを短時間のインテークでやらなければならない、しかもその間に心を開いてもらわないといけないということで,インテークは普通1回2万円から3万円とることもあります」と話していました。

 

つまり、本来、技術的にいえば初回相談、インテークが一番難しく、費用設定もかえって高額でも正当対価性があるというお話でしたので、弁護士の法律相談も異なるところはないだろうな、と思います。そういう意味で、会費で運営されている弁護士会の法律相談が本来の法律相談以上の価値があるインテークを無料で提供するくらいであれば、法律相談センター自体なくしてしまって良いのではないか、と思ってしまいます。あるいは大きなテナントを借りるのではなくて,比較的コンパクトに済ます、など司法書士会などを参考にすればいくらでも智恵は出てくると思います。

 

もっとも,現状では、客観的には法律相談センターの受任率が3パーセント、仙台の場合、紹介を入れても全体で8パーセントということのようです。

客観的な成約率としては、低すぎるような気がするので、ニーズと提供しているサービスが合っていないのではないか、というマーケティングの不足があるように思えてしまいますね。

犯罪被害者・損害賠償命令制度

事業をなされていても犯罪に巻き込まれるということはあるかと思います。

 

あまり知られていませんが,刑事裁判に併せて損害賠償命令というものがあり,刑事記録などを証拠として債務名義(判決と同じ効力があるもの)をとることができるという制度があります。はじめて,損害賠償命令制度の「弁論」というものに立ちました。

 

日本という国は強制執行には冷淡なのですが,犯罪被害者に対しては被害弁償がなされていない場合は,被害者に民事の債務名義を取得させるというくらいのことがあっても,良いと思います。

 

確定すれば時効も10年になるわけですし,その間,回収の見込みが出てくることもあるかもしれません。

 

交通事故訴訟などでの利用が念頭にあるようなのですが,あまり事件番号をみる限り利用されていないようでした。

しかし,刑事裁判の法廷で,検事が退席後に被害者が検事の席に座るというのは,理論的には民事訴訟の場に変わっているとはいえ,被害者が事件当事者であることを印象づけるものだ,と思いました。

 

この制度,特に,示談がなされなかった犯罪被害者向けにもっと積極的に活用されるべきではないか,と思いました。絵に描いた餅になるかもしれませんが債務名義の取得は国家が応援する事柄ではないかと思います。

 

誰も関心がないと思うのですが,損害賠償命令制度の証拠番号は「A号証」というのだそうです・・・。民事は,甲乙丙,刑事は,甲乙弁というのですが「えーごうしょうって何でしょうか」と思わず,コートクラークに聴いてしまいました。

 

これまで,民事訴訟法というのは,権威主義的な学者が何人かいてアンタッチャブルな感じがあったのですが,損害賠償命令制度は民事訴訟と刑事訴訟が交錯する理論的には興味深い分野といえます。そして,刑事訴訟の中に付帯して民事の制度が設けられたことにより,民事訴訟と刑事訴訟の解釈上の断絶というのも,解消に向かうのではないか,と導入されたときは思っていました。

もっとも,この制度は,犯罪被害者の方,検察官,弁護士会が積極活用に向けて動き出すべきだと思うし,犯罪に遭うか否かは偶然のことなので,偶然の不利益をカバーするのは国家の役割だと思います。

そういう意味では,損害賠償命令制度の国選化がなされるのが望ましい姿なのではないかと,考えられました。

意図的な渋滞?

タクシーの運転手さんから,おもしろい話をうかがいました。

 

講習に出たら,警察官が,「わざと渋滞を起こして,死亡事故をなくす」ということで,信号でことごとくとまるようなサイクルへの変更,歩行者がほとんどいない交差点に歩行者天国を設定する,左側のバンクを大きくして左折のスピードを遅くする,というようなことを実行中のようです。

 

たしかに,中区といっても外れの方でほとんど人がいない外堀通りにも歩行者天国。

「有識者をいれたそうだけど,自動車に乗らないおじいさんばっかみたいよ」と。

 

たしかにビジネス街で,わざわざ交通サイクルを悪くするというのは、伏見、丸の内周辺では,あまり合理的ではない・・・と思ってしまいました。

 

航空管制では基本的には「円滑な航空交通流制御と効率的な飛行」といったことを目的としています。そして,それによって事故が増えたという話は全く聴きません。むしろ,飛行時間が最短になるルートを通れるように調整するので物理的には事故が減るという関係にあるように思います。

 

名古屋は交通死亡事故数は北海道並みですが,いずれも高速度交通がないということで共通しています。名古屋という街は電車は各駅停車の地下鉄しかなく,東京では10分の距離も名古屋では地下鉄で25分ということは普通です。

 

移動時間が長いのではないかと思います。東京だと山手線から地下鉄に乗りついでということが可能ですが,名古屋では全部各駅停車の地下鉄といつくるか分からないバスがあるだけです。

 

そもそも,自動車の交通流が減少しないのは,こうした高速度交通の整備の構想がないからというシステム上の問題なんじゃないかと思ってしまいます。

 

運転手さんによると一昨年あたりから始まったそうですが,「ネガティブ」を目的とする施策というのは都市の魅力を減少させますね。渋滞解消策を考えるということは聴いたことがありますが,渋滞を発生させるなんていうことは聴いたことがありません。愚の骨頂といってもよいかもしれません。普通はみなスムースな交通流の流れを希望する人が多いのではないかと思います。

 

魅力的な名古屋。

実現するには,名古屋のたこつぼ学者のいうことばかりを聴くのではなく,東京のみならず海外の事例も参考に円滑な交通流と秩序ある交通を確立する必要があるのではないでしょうか。

これではいくらエコカーを走らせても,ガソリンの浪費が全然なくならないのでは、と思ってしまいます。

 

また,事故が起こったときに,その人だけに責任追及する名古屋独特の悪習は絶ちきる必要があると思います。例えば,久屋大通駅でのエレベーター事故でも,原因はメンテナンスの不良と老朽化にあることは明らかでしょうが,エレベーターを歩いた人の責任,とすり替えてしまいました。しかし,東京や大阪では,エレベーターを歩く人のためにそれぞれ他方を開けておくのが常識です。きちんとメンテナンスで手抜きをしていましたなど,謝罪するべきところは謝罪して,システムの改善を図らないと,事故を起こした人の責任などといい続けても,建設的ではないし,多くの人を不愉快にさせてしまうのではないかと思います。

 

愛知県警も,愚かな施策の実施によってどれくらい死亡事故が減少したのか,是非効果を公表して欲しいです。おそらくほとんど効果はないでしょう。もう少し大局観を持っていただきたいものですね。

名目取締役と社債発行の責任

中には、頼まれて事実上、取締役に名前を貸しているという人もいるのではないでしょうか。

 

東京地裁で、社債を客観的価値からはなれた価格で販売した事案について、従業員の不法行為責任を認めました。たしかに、社債については購入価格に応分の価値があると考えがちですが、財政状態に関わる情報、実態はどうかということを吟味しないと適正価格かは分からないといえます。

 

この判決で注目されるのは名目取締役についても、監視義務を免れる理由にはならないとしている点です。経済的合理性ある社債発行であることを知りながら、代表取締役に事実の確認をしていないとして重過失が認定されました。

 

監視義務は名目取締役であっても免れることができないということは前から知られたことでしたが、改めて社債の発行の販売の勧誘についても監視義務があるといえるのではないか、と考えられます。

代替案を用意しておく。

代替案をオルタナティブというようです。

 

例えば、航空機などは運航する際、目的地に到着できない場合の代替目的地、オルタネートを決めておく、といわれています。

 

代替案を考えられないと心の余裕も失いがちになってしまいます。心の豊かさというのは、究極のところケーバビリティ、複数の選択肢を選べることではないかと思います。

 

現実以外のもう一つの選択肢を選べる余裕が生じる次の戦略につながるかもしれません。

事業損害を考える【再考】

今般、私が関与していたある事件で判決がありました。

 

事業損害が争点となっていましたが、東日本大震災以降、事業損害というのは明示的に意識されているのではないかと考えられます。例えば交通事故ですが、組織としての会社が交通事故に遭うということは考えられません。具体的には役員が事故にあったり、主要な営業マンがという場合に、会社の売り上げ減少を転嫁できるか、という限度での議論は盛んに行われていたように解されるのです。

 

プライバシー保護のため、脚色を加えて別事案としてしますが、ある士業の事務所にクレーンがぶつかってしまい、クレーンのボールによって事業所内が破壊され、従業員も多数負傷したという場合、従業員レベルの問題は交通事故と同じように損害の算定ができるのです。

 

しかし、組織が有機的一体として経済的活動をしているのにそれが止まったという損害をどのように認定するか、という点については、先のコラムの中でも取り上げました。東日本大震災にあたり日弁連の報告書の中で事業損害が取り上げられていたわけです。

 

しかし、士業事務所の場合、そもそも何を損害の基準とするのか、例えば司法書士事務所の場合、依頼を受けても報酬を受けるのは最後であったりします。成功報酬型のコンサルタント事務所の場合、事務所がめちゃくちゃに壊れても、事業遂行のタイミングと入金のタイミングが大きく齟齬がある、つまり支払サイトが長いという問題点があるのです。

 

こうした場合、どのように解するのか、東日本大震災における事業損害においても、先例になるものと考えられる判決と評されるのではないかと考えられます。

 

判決では「製造業者のように一日の稼働能力や予定生産量が比較的明確に定まっているのとは異なり、営業活動が売り上げに直結しているわけではないし、営業活動の成果が入金となって得られるまでには一定の時間を要するという業務の特性」を指摘しました。

 

そして、人員を増やしたばかりで、営業マンが増えれば売り上げが増えそうではあるものの、新人であるということもあり、「売り上げに対する効果は未だ数値化されていない」という特殊事情を指摘しました。

 

たしかに士業事務所で事務員さんを増員したら売り上げがアップするかといえば、すぐには数値化できないように考えられます。

 

そのうえで「民事訴訟法248条を適用し、・・・相当な損害額を認定せざるを得ない」としました。

 

休業期間をどこまで認めるのか、これは東日本大震災ADRでも争点の一つですが、物理的な復旧をもって必ずしも復旧時期と認定することはできないと指摘しています。

 

そして、基本は過去の売り上げを基調として一定の割合を損害として認めています。

 

民事訴訟法248条が適用されただけではなく、いわゆるコンサルタントや士業事務所の組織体に打撃が加えられた場合において、どのような損害算定となるかについてはもちろん、東日本大震災ADRにおける事業損害について、その計算算定につき参考になるものとして紹介した次第です。

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