お役立ちコラム
予備校には、入学したもののやっぱり行けなくなってしまったというケース、結構ありますよね。
予備校や塾を経営している人もいると思うのですが、大分地方裁判所平成26年4月14日は、解除後の期間に対応する授業料の全額を返還しないことを定めた本不返還条項は、平均的損害を超えるものとして、消費者契約法9条1号に該当するものとして、平均的な損害を超える部分が無効となるとの判断が示されました。
大学の入学金をめぐる判例はあるところですが、予備校について中途退学は認められない、というのがこれまでの常識だったように思いますが、大分地裁は、契約書ひな形の破棄を命じています。
全く返還しないという条項となっている場合は、契約書の見直しが必要となるでしょう。
毎月分配型投資信託の販売勧誘時、分配金に、元本の一部を払い戻す性格を有する特別分配金が含まれている等の説明がなかった場合は、どうなるのでしょうか。
この点、パンフレットにも記載がない場合については、販売した銀行及び投資信託組成者である投資信託会社の説明義務違反による共同不法行為が認められ、一定の賠償性帰任が認められたものです。
銀行と投資信託会社の説明義務違反を認めた裁判例としてめずらしいものと思われます(東京地裁平成26年3月11日)。
インターネット上のサイトの記載の一部について引用したいという相談を受けることがあります。
原則的には、無機質で何回建て、色は白などの事実であれば創作性はないといえると思います。
もっとも、創作性があるものであれば、その権利は記事を書いた人、特にサイトであればサイト自体が著作物となりますので、無断で記事を引用すれば「引用」の要件を該当しない限り著作権侵害となります。
文章にかかわらず、記事自体に筆者の個性がなく、また、表現がありふれたものであれば、創作性がないので著作物となりません。
書き込まれた記事には、創意工夫がないもの、単なる事実の羅列、筆者の個性が認められないもの-を除いて、思想または感情を創作的に表現していると判断される可能性が高いと考えられます(東京高判平成14年10月19日)。
なかなか「引用」の要件を満たすのも商用サイトの場合は難しいでしょうから、他のサイトの記事を引用・転載する場合は注意が著作権を侵害しないように注意が必要です。
案件はオーソドックスなものでしたが、口外禁止条項もございますので、詳しくはお話することができません。
解雇、整理解雇、退職勧奨でお悩みの経営者でトラブルが顕在化されていて困っている方は、是非ヒラソルにご相談ください。
債権者は嘘をつく。
なんだ、そんなわかりきったこと、ということのように思うかもしれませんが、最初は、嘘をついているようにはみえずナチュラルに嘘をつくのが、債務者の特徴といえるかもしれません。
おそらくは、長年の事業で培われてきたものなのか、と思うときがあります。回収の話しをすれば、「1ヶ月後においしい入金話しが」と真面目に話し出します。
債務者は、自分にとって都合の悪いことはいいません。いわないだけであれば良いのですが、積極的に嘘をつかれるというのが一番困るように思います。
債務者の嘘がナチュラルなのは、債権者を安心させるためなので、自己保身もあるものの、相手を安心させるという目的があるからかもしれません。
現在では、「勝負の勘」で、いろいろ大変・・・といわれても、これが債権回収の場であると割り切って、基本的には、いっていることの8割引きくらいで話しを聴くと意外感がありません。
よくあるパターンが大きな取引が決まり・・・というものですが、裏付け資料の提出がない限りは信用してはいけないですし、その代金を真っ先に回収することを考える必要があります。
債権回収は、時間が経過すればそれに比例して回収率が低下していってしまいます。
しかし、時間が経過すれば、資産処分を始めたり、金融機関へのリスケを行い始めたりして、何よりも支払う「意欲」、つまり踏み倒せばいいじゃん、という感情が出てきます。
そこで、債務者を取り巻く情報と債務者の信用情報の収集には全力を挙げましょう。
債権回収は倒産一歩手前の危機的状況こそ勝負の分かれ道となります。
この場合は支払を待つという選択肢はありません。他の債権者に先を越されてしまうだけになってしまいます。
とにもかくにも怪しい噂を聞いたら、債務者に会いに行くことです。顧問弁護士として同行したこともありますが、債務者の言い分を聞きながら債権回収の方策を考えることになります。
債権者、しかも顧問弁護士も連れてきているということになると、債権者の心理としては拒否しづらくなります。
そして、この場合でも倒産の危機があるかを見極めながら、信用情報を得るように努めることが大事であるといえます。
さて、日本には多くの中小企業がありますが、多くの中小企業は税法上の有利選択のために法人を設立しています。
結構個人商店にみえても法人になっているケースがあります。
歴史的経過としては、昔は個人事業主であっても「みなし法人課税制度」というものがありました。これによると個人事業主も給与所得控除がありました。
こうして経費と給与所得者控除の二重取りを認めていましたが、平成4年に「みなし法人課税制度」は廃止されましたので、これを機会に法人設立が増えたように思います。
当たり前ですが、このようなインテンションですと、経営者は、年間の利益を予想して、それとピッタリの役員報酬を設定するということをすることになります。
なぜなら、法人に利益を残してしまうと、法人税が課税されること、内部留保についても将来清算所得に課税が生じるからです。
また、役員報酬を家族に分散することにより累進課税による適用課税の税率アップを防ぐことができるということがあります。
理論的にいえば、個人事業の場合、所得税、住民税、事業税がかかります。税負担は約4割といわれています。
そこで配偶者に給料を支払うことになります。専従者給与と呼ばれています。専従者給与を支払う理由は、所得分散による税率を抑えること、給与所得控除の理由の2つです。
個人事業主の人は給与所得者控除はありません。しかし、妻は給与所得者控除を利用できます。また、所得を分散して税率を軽減するというのは分かりやすいところですね!
これを推し進めると、法人設立となります。なぜなら、法人を設立すると、所得を3つに分けることができます。会社、自分、配偶者という形です。
3つに分ければ、税率軽減も有利なようにできる、ということに加えて、経営者自身も給与所得者控除が利用できるようになるのです。
こうして、課税される価格が低くなりますので本人の所得税が安くなりますし、事業税もいらなくなりますので、結構な税金が安くなります。
実は、街の八百屋さんや食堂もなぜか法人になっているのは、税法上の理由が大きいですのですが、せいぜい本人の税金+事業税で、3000万円の所得の場合約170万円程度が節税になります。
もっとも、これからは、あべこべの現象が起こりますので、会社の設立自体は減らないでしょうが、すべてを役員報酬に回すメリットはなくなりつつあります。
私の関与した会社でも、利益が出ると、賞与としてばらまいてしまい内部留保ゼロをモットーにする会社がありました。
しかし、法人税の税率は中小企業の場合、800万円を基準に別れています。これ以外の税金を加えた実効税率は概ね800万円以下は25パーセント、それ以上は35パーセントです。
ところで、所得税の方は他方で増税となっています。復興特別税が25年間も上乗せされます。
また、役員の給与所得者控除についていえば、245万円が限度額となりましたので、1500万円以上の所得の場合、それほど給与所得者控除のメリットがなくなったということになります。
さらに、今後、給与所得者控除は段階的に引き下げられ、2017年のMAXは、220万円になります。
したがって、役員報酬が高いと所得税も高くなる、ということになりますから、これまでの会社の利益をゼロにして、なるべく役員報酬で受け取るという時代は、だんだん終わっていくと思われます。
むしろ、会社内部に内部留保を残しておく、ということが中小企業にとってもある程度の流れ(といってもメジャーになるとは思えませんが)になると思われます。
今後は、法人なりした企業が「個人なり」するか、はたまた所有と経営がある程度分離した中堅企業化していくかに論理的に分かれていくと考えられます。
会場の設営スタッフとして、落語会を主催している場合、居眠りをしている人を追い出してもよいでしょうか。
一般的な対応としてはほかっておく、というケースが多いかと思いますが、いびきがうるさい場合など、興行の支障になることもあります。
そういう筆者も結構・・・、(い)オレンジレンジのライブで、後部座席のためカメラに入ってしまうから退去して欲しいといわれた(これは結構どうかな、と当時は思いました。)、(ろ)パリでクラシックのコンサートにいったが、全然知らない曲目のときに寝てしまった-という経験があり、客の立場からも人ごとではありません(笑)。
裁判例では、退出させる場合、同人の不利益を考慮する必要があり、退出しなければ演目の続行が困難、主催者側の言動が社会通念上相当と認められることが必要とされています。
結論においては、損害賠償請求は、落語家の方がモチベーションが下がってしまうといった事情があったこと、反省の態度がない、中断をした、との関係で不法行為ではないと判断されました。
こうした観点からすると、少なくともオレンジレンジの件では、観客の側に入場料を払ってコンサートを堪能したいという意思・姿勢もあったところ、後部座席であるためカメラに入ってしまうから退去して欲しいというのは、かかるカメラがライブカメラとはいえず、演目の続行にも支障がないので、事態の進行によっても演目が中止になることもなく、原因が専ら主催者側にある場合において、より制限的でない他の選びうる手段、つまり空席や関係者席に誘導するなどの措置を講じる信義則上の義務があったのではないかな、と思うところです。そのときのスタッフは「カネを返すから出て行ってくれ」ということでしたが、こういう対応はサービス業としてはあり得ないでしょうし、裁判例に照らしても名誉を毀損し不法行為を構成する可能性が高いと思います。こうした主催者本位の行動は、ひいてはアーティストの評判にも関わるでしょう。
他方、クラシックのコンサートは、親切な人が起こしてくれましたが、とてもマイナーな曲でしたが、なんとか、耐え抜いて聴いて、お目当ての曲を堪能することができました。
中小企業の法律サポーター弁護士のコラムです。
リーガルハイでも取り上げられていた、マンションを建設し、その後眺望を妨げるかもしれないマンションの建設「計画」がある場合は、現在の販売中のマンションの購入者に伝えなければならないのでしょうか。
それは伝えなければならないだろう、と考えられますが、判例から考えてみたいと思います。
判例として、東京地裁平成11年2月25日では、マンション販売業者に対する南側隣地への建物建築「計画」の告知義務違反による債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償が認められました。
そもそも、リーガルハイでは、「未だ計画にすぎないから計画は未定だ!」というセリフもありましたが、裁判例では、①建物の建設計画の告知を妨げる事情がないこと、②告知について支障がないのに隠したこと-をポイントとして挙げているようです。ところで、この点につき、計画はどの程度成熟したら告知しなければならないのか、という「青写真論」も抗弁としてあり得るのではないか、と思うところですが、判決では、上記の①、つまりは建設計画の段階でも計画があれば伝えないといけない、という論旨のように思われ、それが成熟しているか否かはあまり問題とされていないようです。
もっとも、具体的に「計画」ともいえないような構想段階、また経過年月などの諸事情によっては損害賠償が認められない可能性もあると考えられます。
損害額としては、購入代金1割の請求に対して、2パーセントの慰謝料が認められました。もっとも、商業地域や都心のように、相対的に日照、通風、眺望などの利益は、土地の用途によって異なると考えられますから、特に住宅地区の場合については、慰謝料の増額要素とされる可能性もあると考えられます。
名古屋の中小企業法務弁護士のコラムです。
顧問先や大家さんからよく相談されるのが、「賃借人が行方不明になってしまって・・・」ということがあります。
さて、現場に急行すると郵便物はあふれている、外から見るとなにやら洗濯機が・・・ということがあります。
もちろん法的手続で、明け渡しの債務名義を得て強制執行をすればよいのですが、これが結構手間でして、半日はつぶれてしまいます。
大家さんとしては契約書の「1ヶ月不在かつ賃料の支払い無しの場合、遺留品は放棄とみなす」という条項があるので「捨てたい!」という要望があります。
そして、弁護士や世間の知らないところでは、現実に勝手に捨ててしまっている大家さんもいますが、法的な手順を踏まないと損害賠償請求をされてしまう場合もあります。
最悪でも、遺留品は一定期間リストを作り保管しておくことが望ましいといえます。
しかし、そのようなことを怠ったところ、ひょっこりと、賃借人が戻ってきて訴訟が提起され、1933万円が請求されるという裁判が起きたことがありました。
そして、契約書の条項について適法性を主張しましたが、裁判所(浦和地裁平成6年4月22日)は、6ヶ月の賃料の滞納があるが、訴訟を提起し強制執行ができるのであり緊急やむを得ない特別の事情があったと認めることはできない、とされました。
そして、家財の標準的価額(保険会社の「住宅、家財等の簡易評価基準」)250万円、精神的慰謝料60万円、弁護士費用50万円の267万円の支払いが命じられました。
この判決では「権利に対する違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合において、その必要の限度を超えない範囲内でのみ例外的に許される」との規範を示しています。極めて限定的な場合しか自力救済は認められない、ということですね。なにやら集団的自衛権の必要最小限度の要件にも似ているような印象を受けますが、大本はドイツ法学の比例原則から来ています。ですから、賃貸の自力救済も集団的自衛権の要件も似てくるのですね。朝日新聞に「集団的自衛権はあるか、ないかの二者択一」であり「量的基準は許さない」という社説が載っていましたが、法律家からすれば絶対に許さないというのは、おおかた極端な意見であることが多く大家さんの自力救済も緊急やむを得ない場合は必要最小限度で認められるとされているように(賃貸の場合はほとんど想定されませんが)、量的基準によりバランシングを図っていくというのが法学の基本的な考え方です。
比例原則の考え方からすれば、目的として原状回復をしたい場合は、より制限的ではない方法として物を放棄しないで保管する方法もあるうえ、法的手続による場合は最終的には明け渡しの強制執行という他の手段もあることから、必要最小限度ともいえない、というあてはめになると考えられます。捨ててしまった財物は別として精神的慰謝料も60万円認められていますので、この点は、大家さんの側もベーシックな慰謝料として知っておく必要があるのではないかと考えられます。